ABABA’s ノート

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『論語義疏』最古の写本公開

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(写真1 会場に展示されていた『論語義疏』の写本)

慶應義塾図書館貴重書展示会

 「古代中世日本人の読書」をテーマに丸善丸の内本店ギャラリーで開催されていて、慶應義塾図書館が所蔵する漢籍100点が出品されている。
 注目されたのは初公開となった『論語義疏』の写本。慶応が所蔵しているのは巻六に収められている子罕第九と郷党第十の2編だけだが、巻物1軸になっていた。
 遣隋使あるいは遣唐使によってもたらされたものとされ、現存する写本としては最古級のものとされている。以来綿々と伝わってきたものだが、近年所在不明とされていた。会場にいた係員によると慶応としては古書店を通じて入手したものらしい。特に、中国においては散佚してしまい、伝来した日本にのみ現存している、いわゆる佚存書として貴重な価値がある。
 『論語』はもとより孔子とその弟子たちの言行録。そもそも紀元前の編纂によるものだが、その後長い年月のあいだにはおびただしい数の注釈書が編まれた。代表的なものに魏の何晏の「集解」と南宋の朱熹の「集注」があり、「義疏」は梁の皇侃が「集解」を元に注釈したもの。
 わが国において長らく精神、文化のよりどころなってきた『論語』の伝世最古の写本を目の当たりにできたことは、なかなか興奮するところではあった。
 なお、会場には『史記』三注本の朝鮮活字版など貴重な漢籍多数が出品されていた。

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(写真2 会場の様子)