ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

渡良瀬川とわたらせ渓谷鉄道

シリーズ 川は鉄路の友だち

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(写真1  右に左にと車窓に続く渡良瀬川)

美観異観織りなす

 渡良瀬川は、利根川の支流。栃木、群馬県境の皇海山から足尾を経て利根川に合流する。流域は栃木、群馬、茨城、埼玉にまたがる。延長107.6キロ。
 わたらせ渓谷鉄道は、旧足尾線を継承した路線。桐生駅と間藤駅(まとう)の間を結んでおり、全長44.1キロ。駅数17。
 路線名の通り、ほぼ全線に渡って渡良瀬川の渓谷に沿って走っている。そもそも足尾線は足尾銅山の輸送のために敷設されたもので、貨物輸送が柱となっていたが、その後廃山となり現在では渓谷美を楽しむ路線として関東で人気を集めている。

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(写真2 起点の桐生駅)

 起点は桐生。JR両毛線との共同使用駅。ホームも改札も同じ。上毛電気鉄道の西桐生駅とは徒歩数分のところ。西桐生からさらに水道山の山裾を登っていくと山腹に松本竣介のコレクションで知られる大川美術館がある。
 また、この辺は複数の鉄道が入り組んでいてややこしい。両毛線、わ鐵(わたらせ渓谷鉄道の略称。足尾線と呼ぶ人も少なくないようだ)、上毛電鉄、東武電鉄と4線もが乗り入れている。
 桐生を出るとしばらく両毛線と並行しやがて右に分岐する。二つ目の相老は東武桐生線との乗換駅。上毛電鉄線を跨ぎやがて大間々。わ鐵の車庫がある。本社もここ。

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(写真3 水沼駅にあるホームから入られる温泉)

 車窓右側に渡良瀬川。このあたりではまだ大きな川ではなく渓流である。水沼には温泉センターがある。2面2線の相対式ホームを持った駅だが、せせらぎの湯と染め抜かれた大きなのれんが掛かっていて、1番線上り方面ホームから直接温泉に入ることができる。わざわざ途中下車して一度入ったことがあるが、湯量豊富で、湯加減も良かった。地元の人たちの保養施設になっているようだ。

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(写真4 神戸駅に停車中の列車。左の青い列車がレストラン清流

 神戸と書いてごうどと読む。清流という名の車両を改造したレストランが営業している。沢入(そうり)も難読駅だろう。ここを過ぎて渡良瀬川は左窓に変わった。巨岩がゴロゴロしておりなかなかの渓谷美だ。原向を出て途中から川はまた右窓に動いた。

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(写真5 足尾銅山の工場)

 やがて通洞。このあたりから足尾鉱山の区域に入る。産業遺産足尾銅山観光への最寄り駅である。続いて足尾を経て終点間藤。現役かどうか判然としないような工場群が続いている。今も住んでいるかどうかわからないが社宅も見える。左窓の山肌がむき出しになっている。けだし異観である。足尾鉱毒事件を思い出させる。間藤では道路を挟んで古河の工場が稼働していた。間藤から先へは日光へ抜ける道路が通じている。車で約30分。

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(写真6 わたらせ渓谷鉄道終着駅間藤駅)

  この駅に降り立ったのは二度。初めて降り立った約30年前にはひなびた無人の駅舎だった。それから20年後の2011年には、駅前は何も変わっていなかったが、駅舎は新しくなっていた。

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(写真7 待合室の宮脇俊三『時刻表2万キロ』の掲示)

 待合室には、この駅をもって『時刻表2万キロ』の旅を完結した宮脇俊三を記念する展示が行われていた。宮脇が亡くなるとこの鉄道は宮脇を偲んで特別列車を走らせた。
 実は、私も宮脇さんの名著『時刻表2万キロ』を読んで鉄道にのめり込むようになったもので、特別の感慨があった。

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(写真8 かつての間藤駅=1991年3月30日)