ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

高千穂鉄道高千穂駅

シリーズ 駅 情景

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(写真1 高千穂線終点の高千穂駅=1992年8月23日)

廃線になった終着駅

 高千穂鉄道高千穂線は、延岡駅と高千穂駅を結んでいた第三セクター路線。全長50.0キロ。19駅。全線宮崎県。
 国鉄・JRから転換された路線だったが、2005年の台風被害のため全線で運転休止となり、結局、そのまま2008年12月28日をもって廃止となった。

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(写真2 道ばたから見た高千穂橋梁の様子)

 そもそも高千穂線は、日豊本線の延岡から熊本県境に近い高千穂の間を結んでいて、特に終点の高千穂は神話の里として人気の観光地。高千穂峡や天岩戸神社もあり、また、路線中の深角-天岩戸間の高千穂橋梁(全長353メートル)は、水面からの高さが105メートルもあって、日本一高い鉄道橋として知られた。
 この高千穂線には一度だけだが乗ったことがある。1992年8月23日で、この時のノートには次のような記述がある。
 延岡7時52分発高千穂行き快速列車に乗った。三セクに転換されてサービスが向上したらしく2両のきれいなディーゼル列車である。
 列車は、五ヶ瀬川に沿って走るが、この川は終始エメラルドグリーンの神秘的な深みをたたえている。

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(写真3 車窓から見た見事な滝。運転士はここで徐行してくれた)
 進むにつれて谷が深くなってくる。途中、滝があったり景観の素晴らしいところにくると運転士は徐行させガイドをしてくれる。延岡から約1時間ほど、高千穂駅の少し手前で鉄道ファンにとって有名な鉄橋を渡った。水面から100メートルもあるそうで、確かに谷底は深い。
 なるほど、魅力のある路線で、再訪したいと念願しているうちに廃線になってしまった。

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(写真4 高千穂駅構内。車庫の脇にはさらに線路が伸びていたが、未成線の名残だったか)

 高千穂着9時03分。ホームは1面2線。ホームの端、奥に車庫が見えた。なお、高千穂では短い時間だったがタクシーで高千穂峡や天岩戸神社を巡った。

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(写真5 絶景の高千穂峡)

 高千穂からはバスで県境を越え熊本県の南阿蘇鉄道高森駅に赴いた。なお、高千穂-高森間は国鉄時代に延伸を計画していた未成線で、全長は23.0キロとなっていた。
 やはりこの時のノートには、「高千穂からは熊本行きの特急バスで高森に向かった。阿蘇山の山中だが広大な高原になっていて、牧場が点在し、まるで北海道の夏のような雰囲気だった」とある。
 延岡から高千穂、高森、立野と鉄道で一直線に繋がる路線ができていれば、さぞかし魅力的な鉄道旅を楽しめただろうと思われた。

 それにしても、自然災害に遭って運転休止となりそのまま廃線となる例が多い。岩手県の岩泉線もそうだったし、危ぶまれながらもきちんと復活できたのは三重県の名松線くらいなものか。

 なお、高千穂駅周辺では、観光振興の一環として地元の熱意によって現在は「高千穂あまてらす鉄道」が軽トラック改造車両などを使用した運行を行っているという。高千穂橋梁までも運転されているというからかえってスリリングな絶景が見られるのかもしれない。