ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

秩父鉄道に乗る

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(写真1 貨物線の三ヶ尻線が右に分岐する武川付近)

コロナ自粛後初の鉄道旅

 コロナ騒ぎで自粛していた鉄道旅を再開し久しぶりに出かけた。全線で運転を再開した常磐線に3月16日に乗りに出かけて以来だからほぼ3カ月ぶり。
 どこに行こうかと思案をしていたのだが、いきなり遠くへ出かけるのはそれこそ自粛してまずは近場ということで隣県埼玉県へ。
 気象情報をにらみながら梅雨の合間を縫って6月24日出かけたのは秩父鉄道。
 秩父鉄道秩父線は、羽生駅から三峰口駅間を結ぶ全線71.7キロの路線。埼玉県北部を東西に走っている。ほかに線区としては貨物線として三ヶ尻線7.6キロがある。

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(写真2 秩父鉄道秩父線の起点羽生駅改札口)

 羽生駅は、東武鉄道伊勢崎線との接続駅。私も東武から乗り継いだ。ホーム番号も東武からの連番になっていて秩父線は4番5番の1面2線。自動改札はなくて、ICカードも使えない。そもそも、一日乗車券がほしかったのだが、平日は発行されていないようだ。
  ともあれ、9時57分発三峰口行きに乗車した。時刻表を見て気がついたが、次の列車まで1時間半ほども間が空いている。それも途中駅まで。途中下車を繰り返しながらのんびり進もうと考えていたが、これではままならない。まずは終点まで一気に行ってしまうこととした。3両のワンマン運転。次の熊谷行きは2両となっていた。

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(写真3 熊谷駅に停車中の三峰口行き電車)

 羽生を出ると左右に田園地帯が広がっている。駅名標には手作り感があって愛着が持てる。行田市などとあって、やがて左に寄ってきた上越新幹線の高架をくぐり、高崎線を跨いで熊谷到着。中山道の宿場町だったところで現在も交通の要衝でありこの地方の中心。そして何よりも夏の猛暑で知られている。40度を超して日本の最高気温を記録したこともあったはず。今年も連日30度を超していて、どれほどのものなのか体験をしてみたいものだとつまらぬことを念じていたが、この日は幸か不幸かあいにくと涼しいくらいの気候だった。ただし、電車の冷房は強かった。コロナ対策のせいで、車両の窓は一つおきくらいに上部10センチほどが開けられていた。
 熊谷を出るとやがてひろせ野鳥の森。新しく開設された駅で、右に隣接して貨物の操車場があった。
 明戸を出て右に分岐していく線路が見えたら武川(たけかわ)に到着した。分岐していたのは貨物専用線の三ヶ尻線。この先三ヶ尻にセメント工場があり、さらに高崎線の熊谷貨物ターミナルへと延びている。機関車だけが3両停車していた。
 そうこうして寄居。JR八高線と東武東上線の接続駅で、広い構内があり、右にJR、左に東武のホームがあり、秩父鉄道は真ん中に1面2線のホームがあった。

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(写真4 波久礼を過ぎると左窓に荒川が見えてきた)

 次の波久礼(はぐれ)に至って左に川面が見え隠れするようになった。渓谷になっており、カヌーが浮かんでいた。
 この渓谷は荒川であろうか。やがて長瀞に至った。急流で知られる長瀞ラインが人気の観光地である。
 この周辺は山が両側から迫っていて、細長い盆地となっている。タチアオイが咲いていた。夏なのである。

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(写真5 秩父駅には多くの側線。貨物輸送が大きな柱の鉄道らしい)

 秩父に至っておびただしいほどの側線を持った構内が現れた。構内には長い貨物列車が留置されていた。秩父鉄道は、そもそも石灰石を運ぶ貨物輸送で栄えてきた歴史があり、現在も貨物の収益が大きな柱となっているし、セメント会社が筆頭株主である。また、秩父はもとより秩父地方の中心。秩父神社の夜祭りなどで知られる観光地でもある。

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(写真6 御花畑付近で左の坂を登っていくのは西武線への渡り線)

 秩父を出るとすぐに御花畑。本線から離れて左に上っていく線路が見て取れた。これは西武秩父線との渡り線で、段の上には西武秩父駅が見えた。西武線から秩父線の間には直通列車も運転されている。また、両駅は乗換駅として設定されており、乗り換えは容易である。

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(写真7 終点三峰口駅)

 そうこうして終点三峰口到着。12時12分。羽生から2時間15分も要した。三峯山への登山口であり、この日は午後になっていたから姿は見えなかったが、いつもなら登山客で賑わっているところだ。
 また、この駅構内のはずれには秩父鉄道公園があったはずだが見当たらない。駅員に尋ねると廃止になったという。なんたることか。秩父鉄道の貨車や車掌車も展示されていたのに残念なことだった。
 それで12時28分発ですぐに折り返したのだが、この列車は影森止まり。しかも、影森からの連絡が悪くて、次の列車まで1時間以上も間が空いてしまった。
 しかし、このことで二つの幸運に恵まれた。一つ目は、駅員に教えて貰ったそば屋。駅からほど近いところにあって、ここのそばが絶品というほどにうまかった。人気のそば屋らしく満席だった。
 駅に戻ってくだんの駅員にそのように話したら喜んでくれて、そのついでに影森駅のこと、秩父鉄道のことについていろいろと教わった。このことが二つ目。
 影森の駅を出ると左から坂を登っていく線路が見えたのだが、石灰石を採掘する武甲山へ向かう引き込み線だとのこと。ここで積まれた石灰石は三ヶ尻へと運ばれるわけだ。列車は20両編成で、700トンもの石灰石を運んでいるそうで、1日6往復しているとのこと。どうりで頻繁に貨物列車に行き違うわけだ。
 セメントは産業と生活にとって大事な資材であり、秩父鉄道はその重要な役割を担っていたわけだ。

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(写真8 影森駅)