ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

佐田岬半島佐田岬

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特集 私の好きな岬と灯台10選

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(写真1 岬の先端に立つ佐田岬灯台。海上対岸に見えるのは高島。佐賀関はその右である=2016年2月25日)

日本で最も細長い半島

 佐田岬半島は、四国全体をイノシシにも例えれば、尻尾に当たるであろうか。ちなみに、前足が室戸岬であり、後ろ足は足摺岬であろう。
 日本で最も細長い半島であり、長さは約50キロ、最大幅は6.2キロだが、最小幅はなんと800メートルに過ぎない。その先端が佐田岬であり、佐田岬灯台がある。四国で最も西に位置しており、豊予海峡を挟んで対岸は九州の佐賀関である。
 佐田岬へは半島の付け根にある八幡浜から出発する。ただ、バス便はなく、レンタカーを使用することになり、手配の都合上松山を起点とすることが容易である。私の岬への旅は基本的には行けるところまでは鉄道とし、バスへ乗り継ぐのが一般的だから、このように初めからレンタカーを駆るというのはやむを得ない場合を除いて少ない。

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(写真2 岬への中継点となる八幡浜駅前

 そのことはともかく、松山から八幡浜まで約1.5時間。鉄道なら特急で約50分のところだ。いずれにしても八幡浜駅が岬への中継点となる。
 八幡浜駅前を出発し、伊方原発の標識を右に見ながらやがて佐田岬メロディーラインに乗る。国道197号線のバイパスで、この道路の開通で佐田岬はぐんと近くなった。それまではリアス式海岸をくねくねと走り5時間もかかっていた。とにかくカーブが連続する道路で、国道197号線と語呂合わせで「イクナ(行くな)酷道」とまで呼ばれて揶揄されていたほどだった。
 佐田岬半島は日本列島最大の断層である中央構造線上にあるのだが、メロディーラインはその半島の尾根を一直線に貫いており、気持ちのいいドライブ路線だ。高台を走っているから見晴らしが良く、右に瀬戸内海、左に宇和海が一望できる。

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(写真3 細長く伸びている半島。宇和海側からの展望

 半島を渡る風が強いようで、尾根伝いにおびただしいほどの風力発電の風車が林立しているのが見て取れる。原発と言い、風力発電と言い、電力に随分と熱心な半島ではある。もっとも、岬は総じて風が強いものだから、あちこちの岬で風力発電の風車を見かける。

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(写真4 尾根伝いに林立する風力発電の風車)

 途中、堀切大橋のたもとにレストランのある公園があり、ここが半島で最も狭いところらしい。なるほど、公園の小高いところに立って見ると、確かに二つの海に足をまたいでいるようだった。細長い岬ということでは宮古島の東平安名岬があるが、細さということではともかく、半島のダイナミックな変化ということではこの佐田岬半島が勝るであろう。

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(写真5 三崎港。岬アジ、岬サバの水揚げで知られる)

 メロディラインを40分ほど走り終点で降りると三崎港。美しい漁港で、ここからはいよいよ道は狭まり、九十九折りに進まなければならない。

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(写真6 これは瀬戸内海側から見た半島の突端)

 港からさらに約30分ほどか、佐田岬の駐車場に到着する。ここから先、岬の突端までは車は入れない。駐車場にはライトバンの出店があり、イカ焼きや飲み物を売っていた。

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(写真7 駐車場からの遊歩道。椿のトンネルが続く)

 駐車場から椿のトンネルを歩くこと約20分。多少のアップダウンはあるが、遊歩道がきちんと整備されているしさほどきつくはない。途中に椿山展望台があり、ここからが佐田岬灯台を眼下に納める絶好の撮影ポイントとなっている。

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(写真8 くびれた場所は道幅がわずか数メートルしかない。左宇和海、右瀬戸内海と標識がある=1991年9月29日)

 灯台に到着する直前に簡単な標識が立っていて、左に宇和海、右に瀬戸内海とあって、なるほどここは道幅わずか数メートルしかなく、ここの水はどっちに流れるものかと考えたものだった。なお、ここからは灯台下にあるキャンプ場に行く道が分かれてる。

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(写真9 佐田岬灯台。八角形の灯塔=1998年8月20日)

 佐田岬灯台は、八角形をした堂々たる白堊の灯台。地続きではあるが小島のような印象の先端に立っている。大正11年の初点とあり、灯高は18メートル。
 眼前は豊予海峡である。大きくは豊後水道。対岸が佐賀関半島の関崎。ここは海峡が最も狭まったところで、その距離わずかに14キロ。灯光の光達距離が約35キロというから十分に届く。ちなみに、関埼灯台の光達距離が約23キロだから、海上で二つの灯台の灯りが交わっているのだろう。初点は関埼灯台が明治34年というから断然古いが、狭い海峡で二つの灯台が必要なほど、このあたりの海域は波が荒く海難が絶えなかったものであろう。
 それでだろうが、灯台には照射灯が併設されており、佐田岬の沖合650メートル付近の岩礁黄金碆(おうごんばえ)を照射している。これもれっきとした航路標識の一つだが、不動白光で、照射灯の光度は実に1800万カンデラということである。写真で見ると、まるでビームのような強い光を照射していることがわかる。
 1991年9月28日に訪れた際のメモ帳に次のような記載がある。
 灯台に立って見ると、正面に高島という島があり、その右手に佐賀関が見えた。眼前の海は澄んでおり、ちょうど岬のところで左から右へ潮が流れている。灯台の直下では漁船が漁をしている。風は弱い。目を周囲に向けると、ほとんど真後ろをのぞき300度海ばかりで、鋭く海に突き出た様子がわかる。これほど突き出た岬はほかに例がないであろう。四国の岬は室戸岬、足摺岬などといずれも味わい深いものだが、豪快さで足摺、景観に変化があるということではこの佐田岬であろうか。
 私は3度佐田岬を訪れたが、この印象はいずれの場合も変わらなかった。
 なお、豊予海峡は好漁場として知られており、流れが速いところから身の引き締まった魚が揚がる。佐賀関側で水揚げされる関アジ関サバは特に人気が高く、高値で取引されているが、実は、佐田岬側でも同じ魚が水揚げされており、こちらは岬アジ(はなあじ)岬サバ(はなさば)と呼ばれている。

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(写真10 椿山展望台から見た佐田岬灯台。岬周辺は波の早いのが見て取れる。なお、灯塔の左隣の四角い箱のような建物が照射灯である)

 

<佐田岬灯台メモ>(灯台表、ウィキペディア等から引用)
 航路標識番号(国際番号)/4967(M5424)
 名称/佐田岬灯台
 位置/北緯33度20分6秒 東経132度00分9秒
 所在地/愛媛県西宇和郡伊方町
 塗色・構造/白色塔形(コンクリート造)
 レンズ/第3等大型フレネル式
 灯質/群閃白光 毎20秒に3閃光
 実効光度/25万カンデラ
 光達距離/19海里(約35キロ)
 灯高/18メートル
 灯火標高/49メートル
 明弧/265°~214°
 初点灯/19184月1日
 管轄/第六管区海上保安本部