ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

N響 夏 2019

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(写真1 演奏開始直前の客席の様子)

ロシアとフィンランド 北国の叙情

 NHK交響楽団の演奏会が7月19日、NHKホールで行われた。毎年夏恒例の一般向けの演奏会で、スポンサー岩谷産業。指揮はモスクワ生まれのディマ・スロボデニューク。
 今年の演目は二つ。1曲目は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18。ピアノはマケドニア生まれのシモン・トルプチェスキ。
 ピアノ協奏曲第2番は、ラフマニノフの代表曲で、馴染みやすいメロディもあって親しめた。同じロシアの作曲家としてラフマニノフが尊敬するというチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番ほどではないにしても、印象的な出だしがあって、大胆にして繊細、ラフマニノフの魅力を引き出す情感豊かな演奏だった。
 特にピアノは力強くも闊達な演奏で、心の底に染みいるようなメロディを弾いてきれいな音に感心した。また、演奏中の仕草が独特で、天井を見たり、第一ヴァイオリンの方を振り返ったり、指揮者をのぞき見たりと忙しかった。また、万雷の拍手に誘われて弾いたアンコール曲は、日本古謡「さくらさくら」をアレンジしたもので印象深いものだった。
 2曲目は、シベリウスの交響曲第2番ニ長調作品43。これも好事家の間でシベ2と呼ばれて親しまれている曲で、時にミステリアスに感じさせる豊かなメロディーが印象的だった。ただ、交響詩「フィンランディア」のようなフィンランド人としてののアイデンティティーをことさらに感じさせるようなものには受け止めなかった。
 なお、1曲目の時もそうだったが、オーボエやフルート、クラリネットの演奏がよかった。特にオーボエなどはもう少し長い演奏ならより印象深かっただろうにと思われた。
 また、第3楽章と第4楽章は途切れなく続けて演奏されたから、第4楽章の演奏が終わっても拍手に間があいていた。
 このあたりは、この日の演奏会が定期演奏会のような好事家相手とは違って、スポンサー付きの一般向けの演奏会だからちょっと戸惑ったもののようだった。もっとも、一般向けだから、演目に著名なものが選ばれていて親しみやすかった。
 ところで、チェロの演奏者として、つい前々日にムジカーザでお会いしていた西山健一さんの姿が見られてとてもうれしかった。