ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

近鉄 南大阪線系

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(写真1 柏原駅に到着した道明寺線列車。左に見えるのはJR大和路線)

近畿地方の鉄道路線⑥

 近鉄(近畿日本鉄道)は、JRグループを除き最長の路線網を持つ私鉄最大手。路線距離が501.1キロに上り、第2位の東武鉄道463.3キロ、第3位の名鉄444.2キロを断然上回る。ケーブル線は除き、ほかに、子会社には四日市あすなろう鉄道、伊賀鉄道、養老鉄道がある。
 路線は、大阪、奈良、京都、三重、愛知の5府県にまたがり、路線数は21を数える(子会社を除く)。
 このたびの近畿鉄道旅行では、これまで一度しか乗っていなかったような端末の小路線を選んでつぶすように乗った。旅行は5月23日から27日までの5日間にわたったが、このうち3日間は近鉄に要した。
 近鉄では、路線数が多いこともあって、これらの路線を系統別に7つにグループ分けしている。これは方面別であることのほか、近鉄の路線網拡大の経緯も背景にあり、同じ社内ながら軌間も標準軌と狭軌が混在している。
 まずは、南大阪線系から。軌間が狭軌(1067ミリ)の系統である。南大阪線(大阪阿部野橋-橿原神宮前)を幹線に道明寺線、長野線、御所線、吉野線の支線がある。
 南大阪線は、大阪の南部を奈良の南部に向けた路線。全線39.7キロ。起点の大阪阿部野橋駅は、JRや地下鉄の天王寺駅とは同じ場所。東口とは道を一つ隔てただけ。しかも、住所は阿倍野区であり、通り名にも阿倍野筋とあり、近鉄の駅名は相当に頑なだ。歴史的経緯があるからだろうが、しかし、これは悪いことではない。便利性はともかく、安易に自分の名前を捨ててしまうよりはよほどいい。まあ、よそ者にはわかりにくいが。
 阿部野橋駅のホームが面白い。3番線で列車を待っていたら、ホームにはすだれが降りているではないか。乗客はそのすだれに向かって並んでいる。どうするのかと見ていたら、列車が入線したらすだれがするすると巻き上げられた。これには唖然とした。ホーム柵だったのである。ホームドアを設置するよりは断然合理的だ。関西は何かと柔軟だ。
 列車は朝の通勤時間帯のこと、満席である。しかし、7人掛けの席に6人がゆるゆると座っているだけ。それで詰めてくれるよう若い女性二人に頼んだのだが、どちらも知らんぷり。もう一度頼んだら猛烈に嫌な顔をしてやっと詰めてくれた。席を譲れとは言っていないのにこれはいただけない。あるいは、この路線は7人掛けに6人で利用するのが常態化しているのかもしれない。
 ともあれ、8時00分発河内長野行き準急。かつて近鉄バッファローズのフランチャイズ球場があった藤井寺などを過ぎて道明寺。ここで近鉄道明寺線に乗り換え。1番線から柏原行き8時20分発。本線を少し戻るようにして右にそれた。2両のワンマン運転。柏原南口を経てすぐに終点柏原。わずか2.2キロ、4分の路線。JR大和路線の柏原駅と共同使用駅で、近鉄としてはJRへの業務委託駅である。島式2面4線のホームがあり、1番線が近鉄、2~4線がJR線だった。1番線の階段口に近鉄の改札があった。見ていると、結構乗り換え客が多いようだった。

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(写真2 長野線富田林付近で右窓に見えたPL教団の塔)

 道明寺に戻って一つ進むと古市(ふるいち)。ここで8時54分発近鉄長野線に乗り換え。大阪阿部野橋発の準急列車で、どうやら長野線は南大阪線からの直通列車が大半のようだ。和泉山脈に向かう路線で、途中に、PL教団がある富田林。ここから単線になった。右に白い大きな塔が見えた。隣に座っていた女性に伺ったら、PLの塔だとのこと。後日調べたら大平和祈念塔と称し、高さは180メートルもあるということ。それにしても、PLと言えば高校野球だが、それも数年前に休部してしまって、今やどうなっているものか。
 随分と山深くなって9時20分河内長野着。古市から12.5キロ。南海高野線との共同使用駅で、南海の方が断然立派。南海の駅員に聞いたら難波まで約30分550円とのこと。また、近鉄は約45分560円と言うことだった。難波と阿部野橋と行き先は異なるが、これではどちらを利用するか微妙なところ。

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(写真3 葛城山への登山口近鉄御所駅)

 再び古市に戻り33‰で二上山を越えて奈良県に入った。尺土(しゃくど)で御所線(ごせせん)に乗り換え。単線で、途中からJR和歌山線と並ぶように進み三つ目が近鉄御所。JR御所駅と並んでいる。わずか5.2キロの路線。乗客に登山姿が多いなと感じていたら、ここは葛城山への登山口だった。

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(写真4 車窓から見た吉野川。奥は吉野川橋梁)

 行ったり来たりを繰り返しながらここでも尺土まで戻り橿原神宮前へ。南大阪線はここが終点。ここで吉野線に乗り換え。4両。単線。吉野口で再び和歌山線と合流し、すぐに離れて山塊へと分け入る。相当に山深い。下市口を出て吉野川が寄り添ってきてそのまま進み、大和上市で直角に右に曲がり、吉野川を渡った。吉野川は和歌山県に入ると紀ノ川と名前を変えるが、すでにこのあたりにして大河である。吉野神宮から最後の急登坂を経て終点吉野。橿原神宮前から25.2キロ。往時の吉野詣がいかばかりだったかと忍ばれた。一大観光地らしく大きな駅舎。広い2面3線のホーム。花見シーズンにはいっぱいになるのだろう。駅前には土産物屋が並んでいる。

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(写真5 吉野山の最寄り駅吉野)