ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

余部埼灯台を踏破

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(写真1 余部埼灯台全景)

日本一の灯火標高

 このたびの旅では、旧国名なら丹波、丹後を抜けて但馬に至り、余部埼(あまるべさき)灯台を踏破した。灯台は伊笹岬にあり、山陰海岸国立公園に位置するのだが、鉄道で行くにはとても不便なところで、十分に作戦を練る必要があった、
 前夜泊まった福知山から山陰本線に乗り香住で下車した。ここから香美町町民バスが出ていることは調べておいた。ただ、バスは町民のための足なわけで、観光用ではないから便数が少なくて1日に3本しかない。しかし、1便でもあれば大変ありがたい。
 香住駅に降り立つと、なるほど、駅前に香美町町民バスと書かれたマイクロバスが待機していた。
 11時26分発御埼行き。大変申し訳ないことだが、乗客は私一人だけだった。鎧駅、餘部駅と経由していく。余部埼灯台へはここ餘部が最寄り駅なのだが、停留所の様子がわからなかったし、万全を期して始発の香住駅から乗ったのだった。
 小型のマイクロバスでもないと抜けられないような細い道を進み、岬が近づくと急登坂の連続となった。
 バスの終点は御埼。12時10分到着。小さな集落があるだけのところ。何でも平家の落人部落だったらしい。「史跡 平家村 御埼」と彫られた味わいのある立派な石碑があった。
 ここからは徒歩。舗装道路だがきつい登り坂が延々と続いた。誰とも行き違わない。この日は25度を超す暑さで、一人黙々と喘ぎながら汗だくになって歩いた。
 20数分歩いて登り詰めた。駐車スペースがあって、藤棚に囲まれて簡単ないすとテーブルがあった。リュックや持ち物を置いて、灯台は見えているのだが、300メートルほどか、もう少し歩いた。途中には神社があり、トイレもあった。

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(写真2 第3等フレネル式レンズが立派な灯台頂部)

 灯台はややずんぐりとして太い。白亜の塔形である。大型灯台の部類に入るであろう、灯室は見えていてレンズは第3等フレネル式とある。
 灯台はとても高いところに建っている。平均海面から灯火までの高さ灯火標高約284メートルは日本一である。つまり、日本一高い場所にある灯台ということになる。光りの届く距離光達距離もかつては日本一だったらしいが、算出条件が変更になって、トップは室戸岬に譲ったらしい。
 眺望はというと、これが意外にもあまり良くない。木立が邪魔をしていて、視野が狭いのである。両腕を広げて計ると、90度ほどしかない。これははなはだ残念だった。また、折角高い場所にあるのだが、足下が見えないし、見当もつきかねたから断崖絶壁という印象もなかった。高すぎたからであろうが、潮騒までも届かなかったのだった。
 ただ、視野は狭くとも、大海原は遠くどこまでも見渡せたし、灯台に至る途中では、右手に、香住などの小さな岬が重なって遠望できた。
 灯台に取りけられてある初点プレートには、昭和26年3月初点、昭和60年11月改築とあった。

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(写真3 灯台に至る道筋で見た日本海東側の眺望)

 帰路、バスの停留所までは順調に下りた。来るときに乗ってきたバスの運転士は、帰りは歩くのかと尋ねるから、そうだと答えると、、1時間半くらいかな、まあ、下り坂だからと言って、あとは口を濁していた。何しろ、来るときに乗ってきたバスはすぐに折り返してしまっていて、次のバスまで4時間も待たなくいてはならないのだった。
 それで、その通り、覚悟のこと、歩き出した。岬好きとしては1時間くらいの徒歩はそれこそ覚悟のこと。しかし、登りもつらいが、下りも膝や太ももに負担が大きくてこたえる。
 バテ気味に歩いていたら、後ろから自家用車が下ってきた。手を上げると停まってくれて、途中まででもいいから乗せてくれないかと頼むと快い返事。
 初老の夫婦で、岬と灯台が好きで全国を訪ね歩いていると話すと、それはいい趣味だと感心していた。それにしても言いながら、なぜ車ではなく歩いているのかと問うから、歩いて踏破した方が印象が深く残るし醍醐味があると答えておいた。あるいは負け惜しみのように聞こえたかも知れないが。
 それにしても車は速い。あっという間に餘部駅に到着した。この先の道中に気をつけるよう励ましてくれたし、何度も感謝して別れた。

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(写真4 御埼停留所に到着した香美町町民バス)

<余部埼灯台メモ>(海上保安庁/燈光会/日本財団が設置した看板等から引用)
 所在地/兵庫県美方郡香美町香住区御崎
 位置/北緯35度39分57秒、東経134度32分18秒
 塗色・構造/白色円塔形コンクリート造
 レンズ/第3等フレネル式
 灯質/単閃白光 毎15秒に1閃光
 光りの強さ/44.0万カンデラ
 光達距離/23.0海里(約42.6キロメートル)
 灯高/約14メートル
 灯火標高/約284メートル
 初点灯/1951年(昭和26年)3月25日
   管理事務所/舞鶴海上保安部