ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

熊野灘と遠州灘を分かつ大王埼灯台

f:id:shashosha70:20180801125247j:plain

(写真1 大王崎に建つ大王埼灯台)

志摩半島の灯台②大王埼灯台

 安乗埼灯台からはいったん鵜方駅まで戻り、続いて御座港行きバスに乗り換えた。ここからは志摩スペイン村行きバスなども出ていてちょっとした拠点になっている。乗車約15分で大王埼灯台下車。停留所は漁港にあってここから徒歩10分ほど。
 ちょっとした観光地で、訪れる人も多く灯台に登る坂道の途中には土産物屋が軒を並べている。

f:id:shashosha70:20180801125337j:plain

(写真2 白堊円塔形の美しい灯台)

 坂を登り切ると白堊円塔形の美しい灯台が眼前に迫っている。20メートルを超して背も高く堂々としていかにも灯台らしいたたずまいだ。
 ここも参観灯台で、200円の協力費を払って登楼することができる。灯台が観光の大きな力となっているようだ。内部の階段を使って回廊に登ることのできるいわゆる参観灯台はこれまで全国に16しかなかったが、今年に入って下北半島の尻屋埼灯台も参観灯台の仲間入りしており、今後の灯台の立ち位置を考える上で重要な方向だろう。

f:id:shashosha70:20180801125426j:plain

(写真3 灯台回廊から展望する美しい景観)

 灯台は志摩半島の東南端に建っていて、熊野灘と遠州灘を二分している。左右をぐるっと見渡すと、小さな岬や島影が連なっていて美しい景観となっている。真っ青な空と紺碧の海に浮かぶ緑の島影は絵画的風景だ。
 眼下には岩礁が頭を出しており、海面に隠れた暗礁も多いのだろう。海難事故が多かったようだから、大王埼灯台は貴重な海の道標だったのだろうとは容易に察せられた。また、背後には大王埼の街が迫ってきているのがわかった。
 灯台に登る入口の頭上には、鋳物製のいわゆる初点銘板がはめ込んであって、それには初点昭和2年10月、改築昭和53年12月とあった。意外にも新しくて、大王埼灯台は全国的にも知られた人気の灯台だからこれは驚いた。
 灯台には付属舎があって、現在は展示室となっていた。ここには建設当時の第4等フレネルレンズが展示してあって、その動きが再現できるようになっていたから興味深かった。
 この灯台の最大の特徴は、白と赤の光を交互に発するということ。つまり、専門的には単閃白赤互光といい、毎30秒に白1閃光赤1閃光し、光度も白250,000カンデラ、赤47,000カンデラとなっているようで、灯器はLU-M型、電球はメタルハライドランプとのこと。
 また、展示室には灯台を見分ける光り方という解説があって、灯台は船や街の明かりとはっきり区別できるような光を出していること、隣同士の灯台が同じ光り方をしないように光の色と光る間隔を組み合わせてそれぞれの灯台だけの光り方を作っていると述べてあった。
 また、ランプを点灯させたままでレンズ自体を回転させレンズの中心が向いた方向に強い光(閃光)を出す閃光レンズや、レンズは回転しないでランプを点けたり消したりして明暗光・閃光などを作る不動レンズという2種類のレンズを紹介していて、とても啓蒙的な活動で感心した。
 なお、大王埼灯台付近には絵描きが多くて、あちこちにイーゼルを立てている姿が目立つ。特に高校生の姿が多くて、部活の合宿だという。そう言えば、ここは2度目だが、10年ほど前に来たときにも絵描きの姿は多かった。灯台は格好の題材なのであろう。

f:id:shashosha70:20180801125505j:plain

(写真4 絵描きの多い大王埼灯台。灯台は格好の題材だ)

<大王埼灯台メモ>(海上保安庁/燈光会/日本財団が設置した看板等から引用)
 所在地/三重県志摩市大王崎
 位置/北緯34度16分34秒、東経136度53分58秒
 塗色・構造/白色塔形コンクリート造
 灯質/単閃白赤互光 毎30秒に白1閃光赤1閃光
 実効光度/白250,000カンデラ、赤47,000カンデラ
 光達距離/白色18.5海里(約34.3キロメートル)、赤色17.5海里(約32.4キロメートル)
 高さ/地上から灯台頂部22.5メートル、水面から灯火45.53メートル
 管理/鳥羽海上保安部