ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

本州最南端潮岬と潮岬灯台

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(写真1 潮岬観光タワーから見た潮岬と潮岬灯台)

紀伊半島岬と灯台巡り②潮岬と潮岬灯台

 紀伊日の御埼灯台を訪ねた後は、紀州鉄道を乗りつぶしたりして、その日はそのまま御坊に泊まった。
 翌7月22日、紀勢本線の1番列車で南下し串本へ。途中、紀伊田辺で乗り継ぎの必要があったりして、御坊から串本まで普通列車でちょうど2時間。
 串本では、潮岬灯台と樫野崎灯台と二つの灯台を巡りたい。この二つとも、歴史的にも、景観的にも日本を代表する灯台。
 ただ、この二つの灯台を公共交通を使って一気に回ろうとするとなかなか厄介。町内には串本町コミュニティーバスが運行されていて、潮岬も樫野崎も通るルートは設定されているのだが、本数が少ないしそもそもこのバスは住民のためのもので、観光客の利用は念頭に置かれてはいない。このため乗り継ぎや折り返しの時間などに融通がない。しかし、これはやむをえないことで、タクシーを上手に挟み込んでルートを設定する必要があった。
 そのことはともかく、まずは潮岬へ。串本駅から約15分、岬が近づくと坂の途中に格好の展望地があった。西側からの眺めである。どうやら大きな岬ではないし、鋭く突き出ているというほどでもなさそうだ。ただし、岩礁が多い。

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(写真2 潮岬灯台門柱)

 潮岬灯台前というバス停から徒歩10分弱。門柱には「潮岬灯台」と書かれた門札があり、墨跡が風雨でかすれかかっているが、それがかえって味わいを深くしている。敷地内にはハマユウの花が咲いていた。
 灯台は白堊の円筒形で、太く背が高い。20メートルを超す高さだが、太さはどれほどか。灯台を見るといつも知りたいと思うのがこの太さだが、塔高の表示はあっても、太さについて書かれたものは見たことがない。次の機会には長いロープでも持参し計ってみよう。もっとも、緩いが円錐形になっているから、計る位置によって太さは変わるわけだが。
 灯台は登楼のできるいわゆる参観灯台で、全国に16カ所しかない貴重な存在。石のらせん階段を登っていくと、途中の明かり取り窓の付いた切り込みの台に、濃い赤紫色の花が生けてあった。灯台のような無機質な場所で思わず心が洗われるような気持ちだった。また、この切り込み台から判断すると、灯台は石造で、壁面の厚さは100センチほどにもなるようだ。
 回廊に登ってみると、実に素晴らしい眺め。私流に両腕を伸ばして計ってみると、両腕に余るほどだからこれはもう240度を超す眺望ではないか。岩礁が岬をぐるっと取り囲むように散らばっている。特に灯台直下の岩礁は鋭く沖へと伸びている。この岩礁が灯台の重要性を増したものであろう。
 眼下では、波浪が岩礁に砕けて美しい色彩を見せている。この日は快晴でもあるし、やはり南紀なのか、海の色が明るく美しい。漁船が9隻操業しているし、沖合には航行する大型船がひっきりなしに見える。自然としても、産業的にも豊かな海域なのだ。海水も澄んでいて、岩場では、素潜りを楽しんでいる若者たちもいる。
 ここ潮岬灯台は、いわゆる条約灯台の一つで、幕末に欧米4カ国と結んだ江戸条約によって建設された灯台8基のうちの一つである。
 設計は日本の「灯台の父」ブラントン。1869年(明治2年)樫野埼灯台と共に着工、翌1870年に完成した。当初のものは日本初の洋式木造灯台だったが、その後、1878年4月15日に現在の石造りに改築された。
 なお、現在の灯塔の外面にはアラミド繊維による被覆が施され、耐震補強が行われている。このせいか、灯台は石造とは思われないほど外壁が白く輝いて見えた。
 ところで、灯台には資料展示室が併設されていて、これがとても参考になる。
 それによると、当初の灯台は第2等不動レンズを使用していたとのこと。実物が展示されていて大人の背の高さよりも大きなものだが、現在は120センチの回転式灯器が設置されているとのこと。また、電球も展示されていたが、これがせいぜい20センチほどの大きさで、こんな小さな電球であんな大きな光を放つのかと思うと驚くほどだった。Aランクという最重要に位置づけされる保存灯台だし、日本の灯台50選にも選ばれている灯台で、私はこの灯台を訪れたのは30数年ぶりだが魅力はまったく変わっていなかった。
 また、「ロイズ・レジスター」と呼ばれるロイドの船名録が展示されていた。大部なもので、世界を航行する主な船舶の名称などが記載されていて、1930年版という貴重なもので、潮岬灯台では海上を航行する船舶の名称などを確認していたという。
  一方、灯台は岬の突端には建っていなくて、灯台から歩いて10数分のところに潮岬の突端すなわち本州最南端の地碑があった。穏やかな芝生の園地になっていて、潮岬観光タワーというビルが建っていて、ここの7階最上階からは、岬全体が展望できた。 調べてみたら、本州最南端は潮岬のうちの、細かくはクレ崎というところで、位置は北緯33度25分59秒、東経135度45分45秒となっており、細かくは緯度で16秒低くなっている。

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(写真3 西側から見た潮岬灯台)

<潮岬灯台メモ>(海上保安庁が設置した看板から引用)
 位置/所在地 和歌山県東牟婁郡串本町(潮岬) 北緯33度26分15秒、東経135度45分16秒
 塗色及び構造/白色、塔形(石造り)
 高さ/地上から構造物の頂部まで23メートル、平均水面上から灯火まで49メートル
 等級及び灯質/無等、単閃白光毎15秒に1閃光
 光度/97万カンデラ
 光達距離/19.0海里(約35キロメートル)
 明弧/278度から130度まで
 光源/1500ワットハロゲン電球
 灯器/直径120センチメートル回転灯器
 管理/第五管区海上保安本部田辺海上保安部