ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

美しさ第1等の日立灯台

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(写真1 古房地公園に建つ日立灯台)
常磐の岬を訪ねて②常陸の灯台
 磐城の塩屋埼灯台を訪ねた帰途は途中下車して常陸の日立灯台に寄った。磐城も常陸も旧国名だが、ひっくるめて常磐と遣う方が多いかもしれない。
 いわきから上り列車に乗ると、ほどなくして福島-茨城県境を越え特急列車なら6つ目、48分で大甕(おおみか)。このあたり、日立、常陸多賀、大甕と特急停車駅が続き、日立の大工場群が連なっている。たいしたものだ。乗降客にもそれらしきビジネスマンの姿が多かった。
 大甕駅から海に向かってまっすぐの道が伸びている。その名も駅前通り。日立灯台は初めてだが、あらかじめ調べておいた地図が頭に入っている。迷わずに歩き出した。町名は大みか町というようだ。下校中の高校生と頻繁に行き違う。どうやら学校が近いようだ。
 10数分歩いたところで海に突き当たった。ここから右折して海沿いの住宅地を抜けるとほどなく真っ白い灯台が見えてきた。高級住宅街なのか、美しい家並みが広がっている。途中、キョウチクトウの薄紅色の花が枝いっぱいに咲いていた。ここまで駅から約15分。茨城県日立市大みか町所在。

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(写真2 和ろうそく形の美しい灯塔)
 灯台は面白い形をしている。塔形なのだが、上部がやや広がっており、和ろうそくをイメージしてデザインされたといわれれば、なるほどその通りだ。
 このあたり、古房地公園というのだそうで、美しい芝生が敷かれていて、母親に手を引かれた小さな子どもが数組遊んでいた。公園に立つユニークな造形の塔ということで、あるいは灯台とは思われないかもしれない。
 塔高は24.5メートルあり堂々たるものだ。とにかく姿がいい。レンズはフレネル式で、第3等だから塩屋埼灯台と同じということになる。もっとも、レンズの大きさでは第3等灯台というが、灯塔の美しさだけでいったら第1等ではないか。
 小さな子と遊んでいた若いお母さんに、灯台に登らしてくれたら楽しかっただろうねと話しかけたら、夏休みには一般公開する日もあるということだった。
 灯台には登れなかったが、この灯台はもう一つ面白い構造をしていて、高さ3メートルほど展望台がぐるっと灯台を取りまいている。階段で上れるようになっていて、この展望台からはとても展望が開けた。常時一般公開しない分デッキを設けたのだろうか、気の利いたことである。
 和ろうそく形の灯塔といいデザイン全体が地元の要望も加味して設計されたものかも知れない。初点は1967年だが2000年に改築されたとあった。
 展望台から眺めれば、右手に日立港が見えた。重要港湾の一つで、重電機などのほか自動車の積み出しも多いということである。あるいは日立港の発展との絡みで灯台も建築されたものかも知れない。
 灯台は、座標が北緯36度30分34秒、東経140度37分56秒。緯度からすると、塩屋埼灯台より60キロほど南ということになる。灯質は群閃白光で、毎25秒に3閃光。灯火標高は42.4メートルとあり、海面から20メートルほどの断崖に建っているということになる。光度は21万カンデラ、光達距離は12.5海里(約25キロ)と燈光会が立てた灯台紹介の看板にあった。
 なお、公園には石川啄木の大きな自然石で造られた歌碑があった。
 何事も思うことなく いそがしく 暮らせし一日を忘れじと思う
 『一握の砂』所収の歌で、啄木にしては珍しく充実感が感じられるが、啄木はこの地と何か関係があったのだろうか。

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(写真3 灯台から遠望した日立港)