(写真1 展覧会の開かれていた東京都美術館)
旅するフランス風景画
上野の東京都美術館で開催されている。
プーシキン美術館はモスクワにある国立の美術館。膨大なコレクションで知られ、今回はフランス風景画に絞っての展示となっていた。
旅する風景画のサブタイトルがあって、クールベやシスレー、ピサロ、マティス、ヴラマンクなどと、さすがはプーシキンのコレクションだけあって広範。
特に注目したのはモネの作品で、初期の作品という「草上の昼食」(1868)は、明らかに有名なマネの同名作品「草上の昼食」に構図も似ていて大きな刺激を受けていたことがわかった。
また、ピカソの「庭に家」(1908)は、ピカソの風景画は珍しく、それもキュビズムだから感心した。
セザンヌにサント=ヴィクトワール山を描いた作品は30点もあってポピュラーだが、展示されていた「サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め」(1882-1885)は、よく知られたものとは違った角度から描かれていて新鮮だった。
プーシキン美術館にはかつて一度だけだが行ったことがあって、その膨大なコレクションには驚いたことがあったが、印象派以降の作品群にはゴッホやルノワールなどの人物画などにも佳品が多かったから、風景画に絞った企画立案は残念だった。
もっとも、日本の美術館は、一般に人気の高いヨーロッパ近代絵画では自前のコレクションには質的にも量的にも限界があるから、欧米の著名な美術館からの借用によって展覧会を企画しているのが実情で、いきおい新聞社など主催者間の競争も激しいものだろうから、企画展の内容も狭い分野に追い求めていく傾向があるのかも知れない。
(写真2 セザンヌ「サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め」=会場で販売されていた絵はがきから引用)