ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

展覧会「東京⇔沖縄」

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(写真1 会場の板橋区立美術館)
池袋モンパルナスとニシムイ美術村
 二つのアトリエ村に焦点をあてた着眼点の素晴らしい企画の展覧会が板橋区立美術館で開催された。
 一つは、東京・池袋周辺に戦前から戦後にかけて集った画家たちの群像は池袋モンパルナスと呼ばれ、佐伯祐三や松本竣介らがアトリエを構えていた。
 今一つは、沖縄・首里のニシムイ美術村に集った名渡山愛順らのグループがあり、名渡山は池袋モンパルナスにいたこともあって、戦後、二つの美術村には交流があったようだ。

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(写真2 会場で配られていたチラシから引用)
 展覧会では、池袋モンパルナスとニシムイ美術村がそれぞれグループになって展示されていたが、池袋モンパルナスについてはここ板橋区立美術館が繰り返し取り上げてきているし、ニシムイ美術村についても那覇の沖縄県立博物館・美術館が折に触れて企画展を行ってきていてそれぞれに注目してきていたが、これら二つのアトリエ村が連続性をもって展示されていたことは企画の妙が感じられた。
 松本竣介は3点が展示されていた。このうち<郊外>(1937)は、竣介特有の青がいっぱいに広がっていてこの頃の竣介の心象風景と言えるようだった。
 長谷川利行の<靉光像>(1928)はおよそ靉光らしくなくて、靉光の<自画像>(1944)の深い苦悩との対比が面白かった。
 沖縄のニシムイ村については私は初め原田マハ『太陽の棘』でその歴史を知ったが、その後那覇で展覧会を見たりしてますます注目するようになってきていて、このたびの展覧会でも、池袋モンパルナスの連中よりもニシムイ村の面々にこそ関心があったのだった。
 この中で、名渡山愛順の<郷愁>(1946)など沖縄女性を描いた作品群は強い民俗性が感じられたし、玉那覇正吉の<老母像>(1954)は鋭い目つきに厳しい風雪が感じられて際だった存在感があった。
 また、大城皓也<戦場へゆく>(1968)などは、いかにも沖縄らしいモチーフのように思われた。

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(写真3 名渡山愛順<郷愁>=会場で販売されていた図録から引用)