ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

運行再開の竜田-富岡間に乗る

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(写真1 富岡駅。運行再開に合わせて駅舎も駅前も新しくなっていた)
部分復旧重ねる常磐線
 昨2017年10月21日に運行を再開した常磐線竜田-富岡間に乗りに出かけた。
 常磐線は、2011年の東日本大震災による地震と津波ばかりか原発事故の影響もあって、あちこちに運行休止区間があったが、その後、細切れではあるが段階を踏んで復旧を重ねてきていて、私も運行再開のあるそのつど乗りに出かけてきていた。
 1月26日。上野を8時00分に出た特急ひたち3号を終点いわきで降り、すぐに反対側の3番線ホームに停車中の普通列車富岡行きに乗り継いだ。
 わずか3分の待ち合わせで10時27分の発車。4両編成で、使用車両は日頃は常磐線特急に使用されているそのもので、車両運用上こうなったものかどうかわからないが、いずれにしても何か得したような気分ではある。
 途中、広野では、鉄骨の組み立てが始まったばかりで具体的にはわからないが、海側に大きなショッピングモールのごとき建物の工事中だった。ただ、ちょうど1年前にもここを通っているが、その時に比べ再開発が格段に進んでいるようには見えなかった。
 そう言えば、原発事故後しばらくは、常磐線はいわきからの下り列車の運転はここ広野止まりで、2011年12月30日に私が訪れた際には、広野から先、仙台方の鉄路はさびついていた。
 この広野駅は、福島第一原発から24キロの位置にあるのだが、この時、鉄道はもとより、国道も20キロ圏で閉鎖されていた。タクシーで原発に近づけるところまで行ってもらったのだが、途中の家々は空き家ばかりでまるでゴーストタウンになっていた。その折のタクシー運転手が言った「津波の被災地は時間と金をかければ復旧するだろう。しかし、(原発被害の)ここに元の生活が戻ることはないのではないか」という言葉はいつまで経っても忘れることができないし、実際、その通りになっている。
 広野の次の木戸-竜田間は、強風の影響で徐行運転となり、竜田には8分遅れて到着した。
 復旧の足取りが、広野から先、ここ竜田まで届いたのは2014年で、私は2015年に乗りに来ていた。その折には、竜田から先、原ノ町までは代行バスによる運行となっていた。
 さて、竜田から次の富岡までが運行再開区間である。わずか一駅、6.9キロの復旧だが、竜田を出た列車は遅延を挽回すべくスピードを上げたようで富岡到着は4分遅れの11時13分だった。
 富岡駅はまったく新しくなっていた。10月21日の運行再開にあわせたもののようで、駅舎ばかりか駅前も、周辺の住宅も新しいものばかりで、事情を知らなければ、まるで大都市近郊の新興住宅地と見紛うばかりだ。

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(写真2 帰還困難区域を走る富岡-浪江間代行バス車上から)
 しかし、鉄道の復旧はここまで。ここから先は代行バスによる。11時30分の発車。10数人が乗っていたが、全員が列車からの乗り継ぎのようだった。
 発車すると、すぐに車掌から「帰還困難区域を走るので、窓は開けないように」との注意があった。バスには線量計が積まれ、パソコンに記録が取られているようだった。
 国道6号線を走っているのだが、道路脇には「帰還困難区域」と書かれた看板があちこちに立てられていた。
 沿道はまるでゴーストタウンである。空き家となった建物は、原発事故から7年目を迎えて荒れ果ててきている。国道から脇にそれる道路では、検問が行われていた。帰還困難区域に無断で入り込むのを警戒しているのだろう。
 代行バスが運行されているのは、富岡から途中は夜ノ森、大野、双葉の3駅を挟んで浪江まで20.8キロである。ただし、帰還困難区域の区間は、代行バスといえども途中停車することはできず、ノンストップで走り抜けた。
 代行バスは、かつては竜田-原ノ町間で、8駅46.0キロだったから、随分と短くなった。つまり、その分鉄道が復旧してきているということ。浪江には12時ちょうどに到着した。結局、私は代行バスには4度乗っているが、乗るつどバス運行区間が短くなっていることはうれしいこと。
 浪江で代行バスから鉄道に乗り継ぎ、仙台に向かった。途中、津波被害に遭っていた相馬-浜吉田間が復旧したのが2016年の12月10日で、私は12月24日に乗りに来ていたが、いずれにしても、浪江から仙台まで鉄道がつながったことは画期的なことで、復興に大きな弾みとなっているものと思われる。
 途中の新地、坂元、山下の3駅は高台移転して新たに付け替えられた駅で、新しい駅前では再開発が緒についた様子だった。
 なお、原発封鎖が解かれ、常磐線が全線で運行が再開されるのは2019年度末(2020年3月)と予定されている。

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(写真3 線路が封鎖されている浪江駅構内の様子。仙台から上ってきた列車はここまで)