ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『女の一生』

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(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用)
映像が紡ぐ物語
 モーパッサン原作。日本でも映画化されたように何度も映画になったロングセラーの再びの映画化。今さらという気がしないわけでもないがそれでもまた観に行く。原作は1883年の刊行で、舞台はフランス北部のノルマンディーだった。
 物語は簡単。男爵家の一人娘ジャンヌが修道院の寄宿学校から帰ってきた。やっと自由になれたと言って喜ぶジャンヌに子爵ジュリアンとの結婚が用意された。
 夢のような甘い生活に胸躍らせていたが、やがて夫の浮気を知り、次第に波風の多い人生となっていく。父が亡くなり、31もあった農場を一つまた一つと手放さざるを得ない生活に追い込まれ、終には破産してしまう。この間息子にも裏切られ、唯一そばにいて最後に面倒を見てくれたのは女中のロザリだった。彼女は幼女のころから屋敷で一緒に育ってきたのだった。
  ステファヌ・ブリゼ監督が描いた『女の一生』は、美しい映像が物語を紡いでいる。心豊かな場面は明るいままに、時には残酷なまでに悲劇的場面は暗いままに。回想シーンも含めてフラッシュバックが多用されていたし、明暗いずれの自然の場面も心象風景となっていた。だから、物語の単純さの割には、映画の展開はやや難解となっていた。それがまた映画的香気でもあるのだけれども。
 とりわけジャンヌを演じた主演のジュディット・シュムラがどこまでも美しかった。17歳から最晩年までを演じて秀逸だった。とにかくフランス女性らしいたおやかさと時にたくましさも表現していた。
 50年ほど前にもなるか、原作は読んでいたからラストシーンがどうなるのか興味があった。そうすると、孫を抱いたジャンヌの笑顔が素晴らしかった。その時にはすでに没落していたのに。そして、ロザリがジャンヌに向かって最後に言った言葉はこの映画をまとめていた。人が思うほど人生っていいものでも悪いものでもありませんね、おそらくこう言ったのだったと思うが。