ABABA’s ノート

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京都五重塔巡り④東寺

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(写真1 美しい姿を見せる東寺五重塔)
日本一の高さの五重塔
 四つある京都の五重塔巡り。四つ目の最後はいよいよ東寺。京都を、というよりも日本を代表する五重塔であり、京都のシンボルでもある。
 東寺(とうじ、教王護国寺とも呼ばれる)は真言宗全体の総本山。造営中のところ嵯峨天皇から下賜され、空海が826年創建した。以来、弘法太子信仰の高まりもあって多くの貴顕や権力者の援助を受けて栄えてきた。世界文化遺産に登録されている。
 東寺は南区所在。東京から大阪へ新幹線で向かうと、京都を出てすぐ左手に東寺の伽藍が見え、五重塔が一際高くそびえ立っている。京都の印象を強くするランドマーク的存在である。京都駅から徒歩15分ほど。電車なら近鉄奈良線で京都から一つ目東寺からは徒歩10分ほど。

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(写真2 東寺の正門である南大門)
 九条通に面した南大門(重文)から入ってみる。この門は東寺の正門で、一層だし、二層になっている知恩院や南禅寺の三門のような巨大さはないが、がっしりした印象を受ける。ちなみに門に掲げられてあった提灯にははっきりと東寺と寺名が書かれてあった。東寺とは単なる通称ではないようだ。ただし、宗教法人としての登録は教王護国寺なそうである。なお、両脇で睨みを利かしているはずの仁王像はなかった。そのスペースはあったからどうなったのであろうか。
 南大門をくぐると、すぐ右手に五重塔が見え、正面には堂宇が並んでいる。これらの建物は柵で仕切られていて、中に入るには、広い砂利道を回り込んで拝観受付を通らなければならない。
 五重塔(国宝)は庭に面して建っていて、瓢箪池と呼ばれる池面にその姿を写していた。実に美しく堂々たる五重塔である。高さは54.8メートルあり、日本一高い五重塔である。五層の屋根は逓減もなく、下からほぼ同じ大きさだから、なおさらすらりと高くすっきりとした美しさとなっている。様式は純和様である。
 初めのものは826年空海によって創建されたが、その後4回も消失し、現在のものは5代目で、1644年徳川家光によって寄進されたという。
 内部には金剛界四仏像と八大菩薩像が安置されているらしいが普段は公開されていない。特別公開が行われているらしいが、残念ながら滞在中には実施されていなかった。
 境内には五重塔に近く金堂(国宝)があった。内部が拝観できたが、実に大きな空間で、本尊の薬師如来座像と脇侍である日光月光両菩薩像(いずれも重文)が安置されていた。中尊は高さが10メートルもあるというほどに巨大で驚いた。
 金堂の隣には講堂(重文)。ここも内部が公開されていて、五仏座像(重文)、五大菩薩座像(国宝)、五大明王像(国宝)、梵天・帝釈天半跏像(国宝)、四天王立像(国宝)が安置されていた。須弥壇を取りまくように配置されていて、これが空海の説く立体曼荼羅なのであろう。壮観である。
 なお、この先には食堂(じきどう)もあるのだが、これらの伽藍は一直線に並んで配置されていたが、何か特別の意味があるのであろうか。
 京都に四つあるすべての五重塔を一気に巡ったこのたびの旅。もとより宗教施設なのだが、内部が公開されていないから有り難みにはやや欠けるのも止む得ないが、一方で建築物としての美しさには感嘆した。
 かつての京都には100もの五重塔が建っていたらしいが、その大半は火災によって消失している。地震で倒壊したものもあったのだろうが、現存する五重塔をみると、日本人の建築技術には驚嘆するばかりだ。

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(写真3 東寺の伽藍。正面に五重塔。右奥が金堂、手前は講堂)