(写真1 北松江線と大社線が接続する川跡駅の様子。左から松江しんじ湖温泉行き、出雲大社前行き、電鉄出雲市行きの各線)
島根県のローカル私鉄
一畑(いちばた)電車とは、島根県東部の私鉄。北松江線、大社線の二つの路線がある。北松江線は電鉄出雲市と川跡(かわと)を経て松江しんじ湖温泉33.9キロ、大社線は川跡-出雲大社前間6.3キロを結んでいる。
面白いのは運行ダイヤ。平日と休日とでは大きく異なるのである。つまり、松江しんじ湖温泉へ直行する列車は、平日は電鉄出雲市始発なのに対し、休日は出雲大社発となる。明らかに観光客重視の対応である。なお、電鉄出雲市から出雲大社前へ直行する列車は平日休日にかかわらず設定されていない。
(写真2 なかなか風情のある一畑電車の出雲大社前駅)
10月1日日曜日。出雲大社前から一畑電車の旅をスタートした。出雲大社前駅は、出雲大社参道の中心にあり、大社までも歩いて5分程度。今は廃止なってしまったが、かつてのJR大社駅からは15分もかかっていたから、断然利便性は高い。
さて、その出雲大社前駅(通称電鉄大社あるいはばたでん大社)は、参道に面しなかなか貫禄のある駅舎に1面2線の頭端式ホーム。改札口はその頭端側にある。2両編成。ちなみに一畑電車は全列車2両。
13時56分発。この日は日曜日だから松江しんじ湖温泉行き。立っている人は多くはないがほぼ満席。観光客が大半のようだ。
発車してほどなく4つ目が川跡。14時07分着。この駅では松江しんじ湖温泉、電鉄出雲市、出雲大社前各方面すべての列車が接続する仕組みになっている。ただ、各列車とも接続時間はわずか数分と良く考え込まれたダイヤとなっており、ストレスなく乗換ができとても便利。
この日も、1番線に松江しんじ湖温泉行き、2番線出雲大社前行き、3番線電鉄出雲市行きの各列車が揃っていた。私もここでいったん下車し電鉄出雲市行きに乗り換えた。14時12分発。
出発して三つ目、出雲科学館パークタウン前付近で左から来た線路に並行した。JRの山陰本線である。そのまま並んで走り、終点電鉄出雲市に到着した。1面2線の高架ホームで、14時21分着。JRは出雲市駅である。両駅は隣接しており雨に濡れずに乗換ができる。
すぐに14時55分で折り返し、再び川跡で出雲大社前から松江しんじ湖温泉行きに乗り換えた。
沿線では、黄金色の稲穂がたわわに実り、稲刈りも半分ほどまで進んでいた。
途中、一畑口でスイッチバックを行った。つまり、進行方向が逆転したわけだが、これは、かつてこの一畑口から分岐して左の山側に一駅だけ一畑駅へ向かっていた時代の名残である。一畑には一畑薬師があるのだが、そもそもこの一畑薬師への参詣のために設けられたような路線で、電鉄名もこれに由縁する。
もう宍道湖畔を走っているはずだがなかなか眺望は開けない。右窓が宍道湖なのである。つまり、宍道湖の北岸なわけだが、かつては宍道湖の築堤に線路があったらしいから、その当時はよほど見晴らしが良かったのであろう。
松江イングリッシュガーデン前に至ってやっと宍道湖がはっきり見えてきた。長ったらしい駅名だが、かつてはルイス・C.ティファニー庭園美術館前というもっと長い名前だった。その頃、駅名標のサイズが定型では足りず、この駅だけが横長の駅名標だった。駅名は替えたものの、さほど短くはしなかったもののようだ。
そうこうして終点松江しんじ湖温泉15時53分着。2面2線のホームで、駅舎はガラス張りの新しいしゃれたものだった。
なお、この松江しんじ湖温泉駅は、その名の通り温泉街にあり、JR松江駅とは離れているが、松江城など旧市街にはやや近い。町を南北に分断している大橋川の北側に位置するところからかつては北松江駅と称していたし、路線名には北松江線とその名が残っている。
(写真3 松江しんじ湖温泉駅の外観)