ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

日本一背の高い出雲日御碕灯台

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(写真1 すらりと日本一背の高い白亜の出雲日御碕灯台)
島根半島 岬と灯台巡り①
 先週は出雲に旅行した。島根半島の岬と灯台巡りが楽しみ。
 島根半島とは、日本海に面し東西に長く横たわる半島で、南側は宍道湖であり中海である。東西に65キロ、南北はところにより10キロに満たなく、西の端が日御碕で東端は美保関の地蔵崎である。うっかりするとおよそ半島らしくないし、私に言わせれば半島性が弱いということになるが、しかし、帰路、出雲空港を飛び立った機内上空から見たところでは、半島はまるで細長い海の中道のようにも見えたのだった。また、半島は高山もなく、全般に丘陵地帯のようで、標高もせいぜい数百メートルではないか。
 日御碕灯台へのバス便は非常に悪くて、日中はわずか3本しかない。そのうちの1本を使って10月1日出雲大社バスターミナル10時37分発に乗った。日曜だったせいもあってか乗客は10人ほど。途中で降りた者は誰もいなくて全員が終点まで乗っていた。約20分。
 日御碕灯台の停留所は駐車場になっていて、50台ほども自家用車がとまっていた。ナンバープレートによると、さすがに東日本はいなかったが、宮崎や高知などと西日本各地の車が見られた。出雲大社とセットの旅行者なのだろうが、なかなかの人気ぶりではある。駐車場の周辺には土産物屋が数軒あった。
 灯台は駐車場から坂道を数分下ったところにあるが、すぐに灯台のてっぺんが見えてきた。何しろ背が高いのである。
 その灯塔の高さ43.69メートルは日本一ということで、白くすらりとして実に美しい。しかも石造だからなおさら優美で、これほど美しい灯台もないものだ。日本の灯台50選ばかりか世界の灯台100選ともなっている。
 周囲は荒々しい岩盤で、海岸段丘であろうが、それが海蝕されている。水深があるのか岩礁は見えていない。海縁に建っていて、灯火標高が63.30メートルとあるから、灯高を引くと標高はわずかに20メートルしかない。海際に建ち背の高い白い灯台ということでは本州最東端三陸海岸魹ヶ先灯台が印象を似せている。

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(写真2 灯台は鉄製のらせん階段で登ることができる)
 灯台は、内部に登ることのできる参観灯台。ただ、他の大方の灯台がコンクリートのらせん階段が一般的であるのに対し、ここは鋼鉄製の階段がスパイラル状に上へと伸びている。靴を脱いで上がるというのも珍しいが、ともかく階段は狭く上り下り行き違いのたびに踊り場でよけて待たなければならない。この場合、下りが優先である。
 バルコニーに出ると一気に眺望が開ける。灯塔の高いことが実感できる。若い女性達が下を見てこわいといって騒いでいた。この日は曇っていたから鉛色の海が広がるだけだが見晴らしのいいことはわかる。左右に海岸線が連なっており、私の尺度でいえば両手を広げてちょうどだから180度の眺望か。風は弱かった。
 灯台は日本に5つしかない第1等レンズを持ち、実効光度が48万カンデラ、光達距離は21海里(約39キロ)とある。レンズをしたから見上げると、ガラスが幾層にも重なり合っているのが見て取れた。なお、レンズの下部には「ドーナツ状の容器の中には320㎏の水銀が満たされいます。大きなレンズを浮かべ回転させています」と解説してあった。座標は灯台の位置で北緯35度26分02秒、東経132度37分45秒である。
 初点はいつかと探すと、プレートが見当たらない。それで、入館のチケットを取り扱っていた女性に確認すると、階段の登り口の頭上にあったのだった。灯塔の外壁周りに据え付けてあるのが一般的だからこれは面食らった。プレートには「初點明治三十六年四月一日」とあった。114年の歴史である。
 足下は岩肌がむき出しになって断崖となっている。ただ、灯台は日御碕の突端に建っているわけだが、灯台周辺からは左右後背を見回しても岬としての形状がつかめない。だから、岬としての魅力には乏しい。岬に向かうバスは100メートルほども登ってきたから大きな岬であろうことは想像がつくが。なお、途中、麓の岬の付け根には日御碕神社があった。
 ところで岬名であり灯台名である碕という字。崎や埼と同じ意味だが、碕の付く灯台は日本でここだけである。また岬名にも碕が使われており、岬名は岬や崎であっても、灯台名には埼を用いる場合が多いから、このことでもここ出雲日御碕灯台は独特である。岩盤の印象が強かったから石偏の碕を当てたのかもしれない。なお、『日本地名大百科』で調べてわかったが、地名でも碕の付くところは鳥取県に一箇所あるだけである。

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(写真3 日本に5つしかない第1等フレネルレンズを下から見あげたところ)