ABABA’s ノート

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福島県立美術館を訪ねて

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(写真1 福島県立美術館図書館全景。左が美術館)
ワイエスの傑作と出会う
 飯坂温泉への帰途福島県立美術館へ立ち寄った。美術館は、福島交通で福島駅から二つ目、美術館図書館前駅が最寄り駅で、駅からは徒歩数分のところ、住宅街の中にあった。
 二つの施設が大きな翼を広げたように並んでいる。独立した建物が中央通路で連結されているという様相だ。それにしても、美術館と博物館といった組み合わせはほかにもあるが、図書館というのは珍しいのではないか。

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(写真2 美術館の内部)
 美術館では常設展だけを見た。ここのコレクションは日本画、洋画、抽象絵画から西洋絵画などと幅広いのが特徴だ。
 順に見ていったが、注目したのは佐藤朝山(玄々)の彫刻。大正から昭和に活躍した地元出身の作家のようで、彩色された木彫に特徴があった。「春」という作品に独創性が感じられたが、「釈迦如来像」には慈しみも感じられた。現代の彫刻家による仏像ということで、単なる彫刻作品というものを越えて有り難みが伝わってくるようだった。
 日本画に大観があり深水があり、洋画にも安井曾太郎、岸田劉生、関根正二、小出楢重、須田国太郎などとあって、言わば日本の近代絵画の一覧性があって充実していた。ただ、楽しみにしていた松本竣介の作品は今回はなかった。
 中には現代美術を代表する李禹煥に「遺跡地にて」と題するリトグラフがあった。直島の李禹煥美術館では大型のオブジェが目立っていたから、李にリトグラフのような作品があることが新鮮だった。
 この美術館は二度目だが、今回も楽しみしていたのはアンドリュー・ワイエスの作品と出会えること。特に今年はワイエスの生誕100年だが、ここ福島県美には肖像画の傑作「ガニング・ロックス」があるのである。ワイエスといえばニューヨーク近代美術館にある「クリスティーナの世界」が有名だが、私にはこの「ガニング・ロックス」こそがワイエスの代表作のように思える。しかも、ワイエスの作品の大半がそうであるようにこれも水彩なのである。リアリズムを追求した画家だが、この肖像の厳しさは何だろうか。
 地方の美術館をわざわざ訪ねるのはこういう傑作と出会えるという楽しみがあるからでもあるだろう。

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(写真3 アンドリュー・ワイエス「ガニング・ロックス」=美術館で販売されていた絵はがきから引用)