ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

道南いさりび鉄道

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(写真1 函館駅で発車を待つ木古内行き列車)
旧江差線を死守
 道南いさりび鉄道は、五稜郭駅と木古内駅を結ぶ第三セクター鉄道で、全線37.8キロ、駅数は12。ちなみに英文名はSouth Hokkaido Railwayである。
 かつてJR北海道江差線だったものが、2016年3月北海道新幹線の開業に伴う並行在来線の措置として経営分離され、北海道いさりび鉄道が発足した。また、これより前、江差線のうち木古内-江差間が2014年5月に廃止されている。
 江差線についてはこれまでも何度も乗ってきた。五稜郭-木古内間については特急電車や寝台列車でもたびたび利用していたし、木古内-江差間についても一再にとどまらない。
 しかし、道南いさりび鉄道となってからはこれまで乗っていなくて、同じ線路の上を走るのだし車窓も変わらないわけだが、やはり新しい鉄道会社が運営する路線として乗ってみたかったのである。
 函館駅。いさりび線は線区としては五稜郭-木古内間だが、すべての列車が函館発着である。函館から五稜郭一駅間はJR函館本線となる。
 9月4日、1番線から7時04分発木古内行き。2両のディーゼルカー。函館-木古内間は電化されているのにこれは解せないが、江差線が江差駅まで伸びていた時代は木古内から先の非電化区間も走るためディーゼルカーが使われていたので、この名残なのかもしれない。
 月曜の朝なのに車内は空いている。ボックス席に一人あるいは二人という具合。この様子は、途中で多少乗降が繰り返されたものの大きくは変わらなかった。
 発車してほどなく五稜郭。多くの側線留置線を引き連れ次第に収斂されて到着した。青森駅もそうだが連絡線時代の情緒が感じられて興趣が深い。ただ、現在の函館駅は連絡線時代の名残はまったくない。新しい駅に生まれ変わっているからで、それでも4面8線の頭端式ホームが始発駅であることを静かに主張している。
  五稜郭でいさりび線は左に分岐していく。実は、いさりび線には前日3日にも渡島当別まで乗っていて、その時には五稜郭から乗ったのだった。
 車窓には早くもナナカマドが赤く色づき始めているのが見て取れる。私の経験ではナナカマドは北海道でも函館で最も多く見られるのだった。
 しばらくは函館のベッドタウンという様子。実は、いさりび線のダイヤもそのように組まれていて、函館発の列車は日に19本あるのだが、木古内まで全線を通すのは9本しかなく、残る10本は途中の上磯までの区間運転である。つまり、この区間は函館都市圏ということであろう。

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(写真2 いさりび線の車窓風景。前方は知内方面。並行しているのは国道228号線)
 列車は左窓に函館湾を見ながら走っている。どこまで行っても函館山が見えていて、函館湾の懐の深さがわかった。
 上磯で乗降があった。次の茂辺地では列車の交換が行われた。この茂辺地を出ると次の渡島当別の間は海沿いから離れ岬を横切っている様子がわかった。
 この区間にあるのが葛登支岬で、この葛登支岬灯台を見たくて、前日、渡島当別駅から片道50分も歩いたようなことだった。なかなかきつい道のりだったが、やっと葛登支岬を踏破したという達成感があった。
 渡島当別でたくさん下車した。といっても10人程度だが、ここにはトラピスト修道院があるからその関係者かもしれない。渡島当別はとんがり屋根のなかなか洒落た駅舎で、駅舎には郵便局も同居していた。
 葛登支岬は函館湾の入口に当たるから、その先は津軽海峡ということになる。前方に岬の張り出しているのが見えるが、知内のあたりであろうか。その先は松前半島ということになるのだろう。
 そうこうして木古内8時04分の到着。函館からほぼ1時間。現在のいさりび線の終点である。ただ、その先に線路が伸びている。かつての江差線はここから松前半島を越えて日本海側の江差へ伸びていたのだったが、見えている線路は江差線の跡ではなくて海峡線であろう。旅客営業は行っていないが、貨物列車にとっては今に至るも幹線である。
 また、木古内は北海道新幹線との接続駅で、久しぶりに木古内の駅に下り立ってみたが、まったく新しくなっていた。駅前には道の駅なのか、大きな商業施設があった。いさりび線側にも駅舎はあるが、新幹線側には立派な駅舎があり広場があった。

 なお、細かなことだが、かつて連絡船時代には、五稜郭から木古内に向かう列車は下りだった。函館から道内に向かう列車はすべて下りだったからで、それが海峡トンネルの開通によって、木古内が本州からの道内側の玄関口となり、木古内から五稜郭へと向かう列車が下りとなった。上り下りが逆転したわけである。

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(写真3 新しくなった木古内駅。これはいさりび線側)