ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

津軽鉄道に夏に乗る

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写真1 津軽鉄道の行き止まりの終着駅津軽中里駅)

岩木山とリンゴの車窓風景

  先日の東北旅行では、三陸沿岸を北上したあとは青森県、秋田県、山形県と巡りひたすら鉄道の旅を楽しんだ。
 青森県のローカル私鉄その1
 まず、津軽鉄道。五能線五所川原駅と接続する津軽五所川原駅と津軽中里駅を結ぶ全線20.7キロの路線。津軽半島の中央部を南から北へ走っているが、津軽中里駅は行き止まりの終着駅。
 さて、この路線にどのように乗るか。もちろん、津軽五所川原から往復するのが一般的だが、何かうまい策はないものか。全国に阿呆列車を走らせた百閒先生ではないが、往路は何も用はないけれどただ乗っているだけという楽しみがあるが、復路は帰らなければならないという目的があるから窮屈だ。こう百閒先生のように達観した考え方を持っているわけではないが、何か工夫が欲しい。
 そこで、時刻表をくくってみると、北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅から津軽中里駅を結ぶバスが出ているではないか。行き止まり路線を頭から乗るというのも一興だし、奥津軽いまべつ駅などおよそ利用する機会のないところだしこの際降り立ってみたい。私はこの時青森にいたのだが、この裏技のようなルートを使うと大幅な時間短縮となり、この夜の宿弘前で自由にできる時間が増す。
 6月28日。北海道新幹線はやぶさ13号は3分遅れて13時49分奥津軽いまべつ駅に到着。駅前のロータリーにはすでに弘南バスの中里駅前行きバスが発車を待っている。しかし、3分削られた発車までの貴重な時間を利用して、隣接するJR東日本の津軽線津軽二股駅などを見に走り回ってバスに飛び乗ったらドアが閉まった。間一髪のきわどいところだった。
 14時00分の発車。小型のバスで、乗客は中年の女性と二人。この女性は明らかに新幹線から降りてきたのではないはずで、この路線は、奥津軽いまべつ駅の開業に合わせて開設されたものだが、1日4本しかないバス便にも利用者がいた。
 バスは、しばらく緑豊かな里山といった風景を眺めながらのどかに走る。くだんの女性は20分ほど走ったあたりか、今泉という停留所で降りた。
 その後乗車もなく岩木山が大きく見えるようになったと思ったら終点の中里駅前だった。14時55分の定刻より少し早かった。
 津軽鉄道津軽中里駅はなかなか立派な駅舎。女性の駅員が配置されていた。津軽五所川原までのきっぷを購入したら硬券だった。これは珍しくもうれしいこと。構内には転車台まであった。この頃では見かけることは少なくなったが、よくぞ保存されていたものだ。片側1線のホームだが、なかなか行き止まりの終着駅の風情がった。駅名標に並んで、「最北の私鉄」「最北の駅」の看板があった。
  列車は、津軽五所川原からの折り返し運転で、高校生が10人ほど降りた。どこでもローカル線は高校生とお年寄りが大事な利用者だ。
 15時20分の発車。1両のディーゼルカー。ワンマン運転かと思っていたら、車掌が乗務していた。それもスタイルのいい美人だった。どこまで行くのかと問われたので、終点までと答えると、五所川原では予定はあるのかと続けられたが、すぐにJRに乗り継ぐと言うと残念そうな顔をしていた。その理由は後ほどわかった。
 乗客は私一人で、しばらくまったく乗降がなかった。のどかだが豊かな田園地帯を走っている。

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(写真2 岩木山を背景に豊かな田園が広がる車窓風景)
 15時43分金木。初めて乗客があった。ここは太宰治の生家があったところで、斜陽館は津軽観光の人気ポイントである。また、この駅では列車の交換も行われた。
 車内がにぎやかになったら、くだんの車掌さんが忙しくなった。乗客に話しかけて沿線のことや五所川原のことなどを紹介している。どうやらこの車掌さんは、車掌というよりもガイドのようだった。私には五所川原市街を散策する予定がなかったので、とりつく島がなく残念そうな顔をしたのであろう。
 瑞々しい田んぼが広がり岩木山が大きくなってきた。リンゴ畑が続く。まだ実は小さく、ピンポン玉くらい。農協のりんごセンターなどというものもある。さすがにリンゴの特産地である。また、五農校前という駅があって、大勢の生徒が乗り込んできた。五所川原農林高校のことであろう。
 そうこうして16時05分終点津軽五所川原駅到着。隣接するJR五所川原駅で五能線に乗り継ぎ、弘前に向かった。

 ところで、この津軽鉄道に乗るのはこれで2度目だが、夏は初めて。冬のストーブ列車に人気があるが、夏は夏で清々しいし、なかなかいいものだった。鉄道は、春夏秋冬乗ってみないと良さがわからない。

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(写真3 乗客に津軽の魅力をガイドする車掌さん)