ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

さらば増毛駅

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(写真1 2003年7月17日旧国鉄全線完乗達成の日増毛駅で妻と)
やみがたい愛惜の念
 留萌本線の留萌駅-増毛駅間が昨日12月4日をもって廃止となった。もはや増毛駅に列車が到着することはなくなった。近年鉄道の休止、廃線は相次いでいるが、このたびほど愛惜の念がやみがたいこともない。
 増毛駅には3度降り立ったことがありことのほか思い出深い。
 初めは2003年7月17日。この時が、私にとってJR+第三セクター(旧国鉄)鉄道全線完乗達成の瞬間だった。その気になって全国の鉄道をコツコツと乗り歩いて18年が経っていた。格別の達成感もなかったが、大きな肩の荷を下ろしたような気分だった。
 旅はいつも一人だった。時には妻を誘うこともないわけではなかったが、汽車に乗っているばかりの旅じゃつまらない、と言って敬遠されてきた。その妻が、最後の留萌本線だけは突き合ってあげる、と自分から言い出した。増毛に向かう車窓から入る薫風が頬に心地よかったことを今さらのように思い出す。

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(写真2 猛烈な吹雪が舞う増毛駅。2012年2月10日)
 2度目は、2012年2月10日。この日は猛烈な吹雪で、深川から乗ってきた留萌本線増毛行きの列車は、途中、留萌駅で停車するとそのまま運転続行不可能となり、増毛までの切符を持っていた私一人のために代行タクシーを出してくれた。もちろん、増毛駅には降り立ったのだが、タクシーで乗り付けたわけで、果たしてこれが降り立ったとは言えるものかどうか。
 増毛駅は、相変わらず止むことのない吹雪が舞っていて、駅前の風待ち食堂など雪に埋もれそうになっていた。
 これより先、私は、2007年11月3日に島原鉄道加津佐駅をもって、日本全国全鉄道全線完乗を達成していて、その後、かつて一度は乗った路線をぽつりぽつりと乗り返していたもので、増毛駅再訪は大きな意味があったのである。
 しかし、2度目がタクシーで乗り付けたこともあって何か片付かない気持ちが残っていて、それで、2013年7月25日3度目の増毛駅到着を果たした。
 初めて増毛駅に降り立ってからすでにちょうど10年も経っていて、駅舎はそのままだが周囲の様子が随分と変わっていた。駅舎内にあったそば屋がなくなっていたし、代わって地元産品の店が出ていた。また、映画『駅ステーション』に登場していた、駅前の食堂が観光案内所となっていたし、映画で増毛ホテルとなっていた日本通運の建物は跡形もなくなっていた。

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(写真3 増毛駅に停車中の列車。背後の林の中に増毛灯台がわずかに顔を出している。2013年7月25日)