ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

伊王島灯台(長崎市)

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(写真1=長崎港入港を照らす伊王島灯台)

西洋の佇まいを見せる長崎港への玄関灯
 野母崎からの帰途、伊王島に寄った。
 伊王島は、長崎から南西に鋭く突き出た長崎半島の中程あたり、長崎港への入港を塞ぐように細く鋭く突き出た先端にあたる。このあたり、海上は角力灘(すもうなだ)というらしいが、野母崎から長崎を目指してきた船舶は伊王島を回り込むように北上しなければならない。
 つまり、伊王島には、その突端に伊王島灯台があるのだが、野母崎の樺島灯台が長崎港への門灯だとすれば、伊王島灯台は玄関灯ということになろうか。昨日までは、樺島灯台が玄関口かと思っていたが、そうではなかったということになる。
 国道499号線を長崎に向かっていると、途中に伊王島方面への表示が出てきて左折した。初めに香焼とあり、三菱重工長崎造船所の香焼工場が見えてきた。巨大な門形クレーンが3基も並んでいる。かつては世界最大の最新鋭造船所だったが、この頃では中国などに大型造船所が建設されているから、その地位も変わってきているのであろう。
 車で走っているとわかりにくいが、このあたり小さな島が連なっているようで、香焼島、沖之島と続き、伊王島には伊王島大橋で渡った。
 伊王島には角力灘に面した突端に伊王島灯台があった。この周辺は公園として整備されていて、灯台の脇まで路線バスが通っている。

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(写真2=ユニークな造型で美しい佇まいを見せる伊王島灯台)
 面白い形をした灯台だ。はなはだユニークで、白堊の六角形の台形の上に円形の灯塔がのっており2段構造だ。ブラントンの設計で、初点は1871年(明治4年)というから古い。江戸条約で幕府が設置を約束した8カ所の灯台のうちの一つだという。現在の灯台は3代目だが、最初のものは日本最初の鉄製だったらしい。高さが11.5メートル、平均海面から灯火までの高さは64.4メートルで、座標は北緯32度42分51秒、東経129度45分41秒である。
 また、灯台に付属する形で伊王島灯台旧吏員退息所というのがあったが、これは灯台職員の休憩所だったとのこと。感心したのはこの施設もブラントンの設計だったとのこと。いかにも欧風の建物で、建築学的にも貴重なものらしい。現在は灯台記念館として公開されている。
 灯台は角力灘に突き出るようにあって、はなはだ眺望がよろしい。眼下を長崎港へと急ぐ船舶が往来しているし、対岸に長崎港が指呼の間に見える。
 本土側から進むと、沖之島、伊王島と並んでいるが、その間は10数メートルに過ぎず、この二つの島を合わせて伊王島とすることもあるらしい。
 いずれにしても、伊王島はリゾート地のようで、黄色い屋根をのっけた欧風の住宅が建ち並んでいて、日本とは思われない風景だ。
 沖之島にあたるのであろうか、丘の上にしゃれた教会があった。カトリック馬込教会、あるいは聖ミカエル天主堂とも呼ばれるらしいが、ゴシック様式の美しい教会だ。何でも、住民全体に占めるカトリック教徒の割合は日本で最も高いらしい。
 とにかく、伊王島は深い歴史と西洋の佇まいを感じさせる島であった。

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(写真3=沖之島にある聖ミカエル天主堂。美しい教会だ)