ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

岩手県立美術館(盛岡市)

 

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(写真1=岩手県立美術館グランドギャラリーの空間)

魅力の松本竣介・舟越保武コレクション
 岩手県盛岡市所在。盛岡駅からは市街中心とは反対の西側にある。バスで10分弱ほど。なかなかしゃれた建物で、とくに2階分が吹き抜けになっているグランドギャラリーと呼ばれているエントランスからの空間が素晴らしい。ドラマティックで、これから見る作品への期待が高まる。
 素晴らしいのは常設展示。萬鉄五郎、深澤省三、深沢紅子、橋本八百二、高橋忠彌、松本竣介、舟越保武といった郷土ゆかりの美術家たちの作品が展示されている。
 とくに惹きつけられるのは、松本竣介・舟越保武展示室。好きな美術家の作品を独立展示室で揃って見られるというのは大きな魅力。このため、盛岡を訪れる機会があれば必ず寄りたいところ。
 この日も1時間くらいしか時間がなくて駆け足になったが一通り見て回った。何度も通っているから見慣れた作品ばかりだが、展示替えもあるから新鮮な作品とも出会える。
 松本竣介の「少年像」(1936)が初めてだった。似たような題材のものはあるのだが、これはこれまで見たことがなかった。いつもの竣介らしくナイーヴさが際立っていた。また、代表作といってよいのだろう、「序説」(1939)の前ではいつまでも見ていたくて去りがたかった。
 舟越保武の作品も同様で、いつ見てもその清新さ、慈しみに心が奪われる。「ダミアン神父」(1975)、「聖クララ」(1981)などとあって、もう少し時間に余裕があれば至福の時を過ごせたものをと思わざるを得なかった。
 松本竣介も舟越保武も盛岡中学(現盛岡一高)の同窓で、交友は上京して美術家となってからのものだっただろうが、この二人が絵画と彫刻とそれぞれ分野がちがうものの、切磋琢磨して魅力的な作品を遺してきた、この傑出せる美術家を生んだ盛岡の風土というものもいいものだなと思ったものだった。

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(写真2上=松本竣介「序説」と同下=舟越保武「聖クララ」=いずれも会場で販売されていた絵はがきから引用)

野口久光シネマグラフィックス展

 一方、訪れたこの日行われていた企画展は野口久光シネマグラフィックス展というもの。映画誕生120年記念とあり、野口は東宝で1000枚以上もの映画ポスターを描き続けたといい、その業績の全体像がわかるような展示だった。
 ポスターとしては1930年代から50年代が中心のようで、順に見ていったら見たことのある映画が次々と出てきた懐かしかった。ただ、私は年間250本もの映画を見ていた時代もある、若い頃からの映画ファンだが、映画として見たことはあるものの、ポスターとしての印象で深くマッチするものはさほど多くはなかった。それは、封切り当時ではなく後年に見たというタイムラグがそういう印象を持たせたものかもしれない。
 そういう中で、映画としてもポスターとしても印象深かったものをいつくか。キャロル・リード監督でオーソン・ウエルズの存在感が忘れがたい「第三の男」、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督でイヴ・モンタンが主演した「恐怖の報酬」、ヌーヴェル・バーグの記念碑的作品フランソワーズ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」、デヴィッド・リーン監督キャサリン・ヘプバーン主演「旅情」などとあって、いやはや枚挙にいとまがない。

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(写真3=「大人は判ってくれない」映画ポスター=会場で販売されていた絵はがきから引用)