ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

牡鹿半島の突端黒崎と陸前黒埼灯台

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(写真1=牡鹿半島の突端に建つ陸前黒埼灯台)

半島が一望にできる御番所展望棟

 牡鹿半島は、宮城県の石巻の東、女川からは南に伸びる半島で、太平洋に鋭く突き出ている。三陸リアス式海岸の南端に当たり、周辺には島嶼が多く、牡鹿諸島とも呼ばれる。その一つ金華山に人気がある。
 女川駅前からレンタカーで黒崎を目指した。7月4日10時20分出発。半島の尾根を牡鹿コバルトラインという道路が貫いていて快適。どこまでも突端を目指せばいいわけだし、これならば予定時間を大幅に短縮できそうだ。
 実際、半島が見渡せる御番所公園に着いたのはぴったり予定通りの11時ちょうど。仙台藩唐船番所という小屋が残っていて、ここから外国船の往来を見張っていたものらしい。

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(写真2=牡鹿半島を見渡す御番所展望棟からの眺望。右手奥が突端の黒崎か)

 また、その近くには展望台があって、左右前方ぐるり240度ほども展望ができた。半島がこれほど一望にできるところというのも珍しいほどの眺望だった。左には眼前に金華山が横たわっていて、右には眼下に鮎川漁港が見えた。鯨漁で知られた港である。前方には黒崎であろう突端が遠望できた。
 どこまでも突端へと下っていけばいいのだし、迷うようなこともないのだろうと思えたのだが、念のため駐車場で会った地元の人に黒崎への道順を尋ねたところ、「行けるのかな」などと気になることをぶつぶつ言いながら、とりあえずこのまま下っていってT字路を右折して下さいというのでその通りに進んだ。
 それで、漁港に突き当たったが、その先がわからない。おそらく左だろうと見当をつけて進むと、途中に弁当屋があって、その女主人の助言通りに泰平荘という民宿の角から脇道に入っていくと、どうも様子がおかしい。幸い、すれ違った軽トラックを運転する老夫婦に尋ねると、懇切に教えてくれた。知らないものにもわかるようにという教え方でこれがよかった。何と、牧草地の中を突っ切って行かなければならなかったのである。
 長い間人が踏み込んだ痕跡もないような道を進むとやがて灯台が見えてきた。陸前黒埼灯台である。樹木でぐるっと取り囲まれていて視界はすっかり遮られている。こんな灯台初めてだ。おそらく灯台のてっぺんだけは林から顔を出しているのだろう。
 灯台の形も変わっていて、白い円形ですらりとはしているが、台形にはなっていなくてまるで煙突だ。灯台というよりも航路標識にに似ている。まあ、灯台も航路標識ではあるのだが。直径は2~3メートルほどか。タイル貼りになっている。調べてわかったが、灯高が11メートル、灯火の海面からの高さは65メートルとあった。
 断崖の上にあるということで、できれば岬の突端まで進みたいと思ったが、足を踏み入れることすら難しかった。座標は灯台の位置で北緯38度16分21秒、東経141度31分7秒である。
 一般的に、灯台には標識の看板が立っているものだが、ここにはそれもない。ただ、「陸前黒埼灯台」との銘板だけはあって、かろうじてその存在を示していた。
 牧草地は私有地であろうからこういうことになっているのだろうが、それにしても、眺望の開けない黒崎の突端ではあった。

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(写真3=眼前に横たわる金華山。半島とは金華山瀬戸を挟んで数百メートルの距離)