ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

釜石線 賢治と民話豊かなライン

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(写真1=美しい緑が連なる釜石線沿線風景。並走する国道283号線と猿ヶ石川)

イーハトーヴの世界
 先週末から4日間にわたって岩手県と宮城県の沿岸部を旅行した。重茂半島と牡鹿半島を訪ねるのが楽しみ。併せて被災鉄道の復興状況も知りたい。
 まずはJR釜石線。7月1日金曜日。上野6時10分発の東北新幹線やまびこ41号を新花巻で下車9時07分着。すぐに釜石線に乗り換えた。
 新花巻はちょっと変わっていて、新幹線から在来線へはいったん駅を出て連絡通路を進まねばならない。新花巻は東北新幹線の新花巻駅開設に合わせて開業した新駅で、いかにもとってつけたような構造。片側1線の狭いホームがあるだけである。

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(写真2=列車の到着を待つ釜石線新花巻駅ホーム。クロスしている上部は東北新幹線である。駅名標にはエスペラント語も併記されている)

 釜石線は、東北本線の花巻と釜石を結ぶローカル線で、全線90.2キロ、駅数は24。岩手県の中央部を北上盆地から北上山地を越え三陸沿岸へと横断している路線である。
 新花巻9時19分発快速はまゆり1号釜石行き。3両のディーゼル。できれば列車には始発から、あるいはその線区の頭から乗りたいものだが、新幹線との乗り継ぎ時間の都合でやむをえず新花巻からの乗車となった。
 新花巻を出てほどなく北上山地へと分け入っていて登坂が続いている。宮守を出てすぐに宮守川橋梁を渡った。通称めがね橋と呼ばれて親しまれている橋だが、乗車していては美しい3連アーチもチラッとしか見えなかった。この橋は宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』のモデルとなった橋である。
 賢治と言えば、この釜石線は銀河ドリームラインの愛称があって、各駅にはエスペラント語の愛称がつけられている。例えば、新花巻はステラーロ(星座の意)だし、土沢はブリーラ・リヴェーロ(光る川の意)である。
 沿線は、田植えが終わり水が張られて、青々としみずみずしく美しい。何の変哲もなくのどかな風景だ。しかし、心安まる風景でもあって、賢治が理想郷としたイーハトーヴの世界を連想させた。
 遠野10時01分着。6割方が下車した。民話のふるさとであり、人気の観光地である。途中下車したいところ、次の都合もあるしそのまま乗り通した。
 仙人峠を25‰の急登坂で越えてそうこうして釜石10時48分着。三陸鉄道南リアス線の列車が隣のホームでアイドリングしていた。なお、この釜石が起点である山田線は震災の津波被害により不通のままである。

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(写真3=釜石線の終着駅釜石。駅の目の前は新日鐵住金の工場である。ラグビーが盛んで、2019ラグビーワールドカップへの期待が高まっている)