ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

岬と鉄道ぶらり旅

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(写真1 日本海に臨む秋田県男鹿半島の突端入道崎)

 

留萌本線増毛駅

 岬が好きでよく訪ね歩いてきた。日本全図程度の大きなスケールの地図に載っているような岬はほとんど踏破したと思う。
 ともかく、一般人が自由に到達できるという意味で、最北端宗谷岬(北海道)、最南端高那崎(沖縄県波照間島)、最東端納沙布岬(北海道)、最西端西崎(沖縄県与那国島)にはいずれも足跡を残した。
 岬の魅力は寂寥感だろうか。劈頭に立つ爽快感も忘れがたい。断崖から思わず海に飛び込みたくなる誘惑に駆られるが、幸いと言うべきか、これまではそういうことは一度もなかった。
 岬にはずいぶんと鉄道で行った。岬は辺境にあるから、鉄道も隅々まで乗ってきた。
 ある日、(宮脇俊三さんの著作を読んで刺激を受け)ざっと調べたら、全体の7割ほどを乗っていた。これなら全部に乗れるのではないか、そう思い全線踏破を目指した。
 しかし、はじめの7割と残る3割、難易度が違った。虫食いのように残っている路線をつぶしに行く、そのような旅が毎週末続いた。
 例えば、男鹿半島の入道崎には秋田から男鹿線の終点男鹿の一つ手前、羽立駅が入道崎へのバス便の最寄り駅となる。男鹿まで行ったのではバスに連絡しないのである(現在は異なって、男鹿駅発のバスは男鹿線の到着を待って発車する)。
 従って、全線踏破のためには、一駅分だけ残った男鹿線にまた乗りに行かなければならないということになるのであって、それはそれで楽しみではあるのだが、何とも物好きなことに、まるで修行者のように端っこをつぶしに行く旅が続いていたのである。
 その気になってから18年。2003年7月17日、留萌本線増毛駅をもってついに旧国鉄(JR・第三セクター鉄道)全線完乗を達成した。格別の達成感もなかったが、大きな肩の荷を下ろしたような気分だった。
 旅はいつも一人だった。時には妻を誘うこともないわけではなかったが、汽車に乗っているばかりの旅じゃつまらない、と言って敬遠されてきた。
 その妻が、最後の留萌本線だけはつきあってあげる、と自分から言い出した。増毛に向かう列車で車窓から入る薫風が頬に心地よかった。

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(写真2 娘が作ってくれた全線踏破記念の幕を手に増毛駅で=妻が撮影した)