ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『死刑にいたる病』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 阿部サダヲ好演 主人公榛村を演じた阿部サダヲなくしてこの映画の成功はなかったと言えるほどの絶妙の配役だった。 24人の若い男女を殺した連続殺人事件の犯人榛村は、このうち9件で立件され、死刑判…

沢木耕太郎『飛び立つ季節』

旅のエッセイ集 情感たっぷりで心温まるエッセイだ。ちょっとしたエピソードを一編の作品に仕立て上げて秀逸だ。一編ずつは短いから読むにちょうどよい。 旅の行き先は全国に及ぶが東北が多いようだ。会津若松、金沢、修善寺、黒石、男鹿、松江、柳川、臼杵…

スイカ割りと花火

(写真1 スイカ割りの様子) 夏の風物詩 夏休みで小さなこどもたちが遊びに来た。 滞在中、こどもたちが喜ぶ遊び。 一つは、スイカ割り。目隠しをされるとなかなか目標がつかまらない。右!とか、ちょっとだけ左と叫ばれるのだがなかなか難しい。もっとも、…

真夏の花

(写真1 ノーゼンカズラの花) 強い花が夏を乗り切る 今年の夏はまことに暑い。例年もそうだったのだろうかとも思うが、やはりことのほか暑い。熱中症にかかったのか、食欲が衰え、足もとがおぼつかない。およそ食欲がないなどということのないものだからち…

岩合光昭写真展

(写真1 会場の様子) ねこといぬ NHKテレビ『岩合光昭の世界ネコ歩き』で知られる岩合光昭の写真展。千葉県の柏市民文化センターで開かれている。 テレビでは、多くはネコを追いかけているが、この写真展では、ネコとイヌが一緒に写されている写真が多…

文=リウ・スーユエン、絵=リン・シャオペイ『きょうりゅうバスでとしょかんへ』

台湾の絵本 ミミとココとフェイフェイは、おはなしがだいすき。 水曜日の午後は、町の図書館のおはなしのじかん。でも、図書館はちょっと遠くて、学校が終わってからだと遅刻しちゃう! でも 大丈夫!きょうりゅうバスがたすけてくれる。三人はきょうりゅう…

近藤健児/久保健『クラシック偽作・疑作大全』

名曲は名曲だが 偽作とは、真の作曲者が別人と判明している作品のこと。疑作とは、真の作曲者が他人かもしれないと疑われている作品のこと。 18世紀までは売らんがために勝手に有名作曲家の名前をつけて別人の楽譜を出版するなど、ずさんなことが平気でな…

しずくいし夏の音楽祭東京公演2022

ミューゼシード・イン・ムジカーザ コロナ下のこと、開催自粛が続いていて今年は4年ぶりの開催。 そもそも「しずくいし夏の音楽祭」とは、岩手県雫石町で毎年8月に開催されている室内楽を中心とした音楽祭で、東京公演はその出演者たちによるもの。主催者に…

浦賀水道 海峡の町

日本海峡紀行 (写真1 燈明堂に近い浦賀港の港口) 浦賀水道を渡る④ 海峡は、海峡を渡ることがまずは魅力だが、海峡の町も楽しみ。 三浦半島側は横須賀であり、房総半島側は金谷である。 このたびの浦賀水道二日がかりとなった海峡の旅では、途中、横須賀に…

浦賀水道四つの岬・灯台

日本海峡紀行 (写真1 洲埼灯台から見た三浦半島) 浦賀水道を渡る③ 浦賀水道を囲む四つの岬・灯台。1日目に三浦半島の剱埼灯台と観音埼灯台を訪ね、2日目には房総半島の洲埼灯台と富津岬を踏破した。洲埼灯台 三浦半島久里浜港から東京湾フェリーで房総半…

浦賀水道の灯台と岬

日本海峡紀行 (写真1 浦賀水道を航行する船舶) 浦賀水道を渡る② 三浦半島と房総半島に挟まれた浦賀水道には、取り囲むように四つの岬・灯台がある。 三浦半島側には、剱埼灯台と観音埼灯台、房総半島側には洲埼灯台と富津岬である。なお、富津岬には灯台は…

浦賀水道を渡る

日本海峡紀行 (写真1 浦賀水道を渡るフェリーの航跡) 東京湾と外洋をつなぐ海峡 東京湾に海峡があるとはちょっと想像もできにくい。もちろん、水道も瀬戸も海峡のうちという意味においてだが、湾内に海峡があるものかとも思う。それなら海峡とは何かとい…

2022国際ウエルディングショー盛大に開幕!

(写真1 盛況の会場) イノベーション進む 2022国際ウエルディングショー(日本溶接協会・産報出版主催)が、昨日7月13日東京ビッグサイトで開幕した。会期は16日までの4日間。 国際ウエルディングショーは、溶接・接合、切断に関する世界的な展示…

マリリン・スコット『アクリル画バイブル』

画材・色・表現技法のすべてがわかる ここのところアクリル画作品を見る機会が多くて、アクリル画とはどういうものなのかその基礎が知りたかった。もっとも、アクリル画を描いてみたいというようなことではなかったのだが。 アクリル絵の具は、化学製品の副産…

村上春樹『古くて素敵なクラシック・レコードたち』

LPの膨大なコレクション 村上春樹といえば、LPの膨大なコレクションで知られ、ジャズやクラシックに造詣が深い。 高校時代からLPの蒐集が始まったようで、そのコレクションは1万5千枚というから驚く。コレクションは1960年代半ばから。 村上のコ…

橋本正三『駅舎国鉄時代1980's』

2062の駅舎写真 1980年代の国鉄駅舎が紹介されている。併せて私鉄の駅も一部挿入されている。 JRは旅客の利便性向上などを目的に積極的に設備投資を行い駅舎の新築改築を行ってきたから、今となっては国鉄時代の駅舎は貴重なほど。 それにしても、…

『探偵の誇り』

推理作家協会賞受賞作家傑作短編集 70年を超す歴史を有する日本推理作家協会賞。その受賞作のラインナップは、戦後日本のミステリー界の動向そのものだ。 本書は、その推理作家協会賞受賞作家6人の短編集。 その顔ぶれがすごい。坂口安吾や横溝正史から高…

とんかつ やまいち

(写真1 やまいちの入口) 極上の特ロースかつ 神田須田町一丁目所在。丸ノ内線淡路町駅、都営新宿線小川町駅から徒歩数分。靖国通りから南へ多町通りを少し入ったところ。玉井ビル1階。 とんかつの名店に数えられる店。私は初めてだったが、同行者が馴染…

佐高信『当世好き嫌い人物事典』

私の出会った人 「私の出会った人」と題しメールマガジンまぐまぐに連載されていた124人が再録されている…… と、わかったのは読み始めてからで、本書を手に取るまでは佐高一流の辛口の人物評かと期待していたものの、実際は、軽めの交遊録みたいなもの。 …

魅力的なMOMATコレクション

(写真1 松本竣介の絶筆<建物>) 東京国立近代美術館の所蔵作品 東京国立近代美術館(略称MOMAT)は、近現代に関し国内最大級のコレクションを誇り、所蔵作品は13,000点を超す。作品の入れ替えをしながら年に数回コレクション展を行っていて、重…

石川祐基『日本のもじ鉄』

鉄道サインと書体の図鑑 鉄道の駅名標や駅舎看板、出口案内や構内のサインなどに使われているデザインと書体を集めた図鑑。 全国201の路線が収録されており、何とケーブルカーや貨物線までも網羅しているという徹底ぶり。 JR東日本については渋谷駅の駅…

原田マハ『常設展示室』

絵画と人生が交差する6つの物語 『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』『デトロイト美術館の奇跡』の系譜につながる、著者得意の絵画をモチーフにした短編集。 6編が収められており、ピカソ<盲人の食事>の「群青」、フェルメール<デルフトの眺望>の「デ…

清水浩史『楽園図鑑』

日本の絶景無人島 楽園は、島にこそあるのではないか。とりわけ日本にあまた存在する無人島は、楽園そのものではないか。 こうして、著者は37の島に渡っている。そこはどういう島だったのか。果たして楽園だったのか。これらの島々は、人口0人はもとより…

梅雨空の花

(写真1 梅雨時を代表する花アジサイ) タイサンボクもタチアオイも 梅雨の季節の花といえばアジサイ(紫陽花)。それこそ我が家の庭にも咲いているほどで至るところで見かける。様々な色があるが、ラピスラズリのようなブルーが好きだ。なお、色は土質の酸…

銀座で坂本務展

(写真1 会場で作品を背景に坂本務さん) パステル画の鮮やかさ 銀座の新井画廊で開かれている。 会場に入ると、明るい色彩が目に飛び込んできた。実に鮮やか。30点ほど展示されていたが、すべてアクリル画。キラキラと輝いている。 坂本さんは、1950…

金沢の国立工芸館

(写真1 金沢にある国立工芸館の美しい外観。左・旧陸軍第九師団司令部庁舎、右・旧陸軍金沢偕行社) 未来へつなぐ陶芸展 このたびの金沢滞在中見学した。 兼六園に隣接してあり、真弓坂口の脇から広坂をゆっくり登っていくと県立美術館の隣りだった。 大変美…

梅雨入り直前の金沢

(写真1 土塀が建ち並ぶ長町武家屋敷) 戻った観光客 先週は金沢へ旅行した。金沢は1年半ぶり。梅雨入り直前で天気予報では3日間とも雨のようだったが、晴れ男の面目躍如、降ったりやんだりながら、結局、滞在中には傘はささずに済んだ。 金沢はとてもに…

まるで川のような狭水道音戸の瀬戸

日本海峡紀行 (写真1 音戸の瀬戸。手前が音戸大橋で、奥が第二音戸大橋) 呉港と安芸灘を最短で結ぶ 瀬戸とは、狭い水道のこと。つまり、瀬戸も水道も海峡である。 音戸の瀬戸は、広島県呉市の本州側と対岸の倉橋島との間の水道。平清盛が開削したという言…

生活の中の尾道水道

日本海峡紀行 (写真1 千光寺の展望台から見下ろした尾道水道) まるで〝箱庭〟のような美しさ 尾道水道は、尾道そのもの。尾道水道なくして尾道の町はなかったわけで、町の中に水道をかかえているようなものだし、こういう海峡と町との関係は少ない。 尾道…

自転車で船でバスで来島海峡

日本海峡紀行 (写真1 来島海峡大橋から眼下に見た来島海峡。潮流の様子もわかる) 3度も渡って楽しめる海峡 このたびの海峡巡りでは、来島海峡は3度渡った。つまりどういうことかというと、海峡は船で渡りたいものだが、初めは自転車で渡り、次に船で渡…