ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03 読書ときどき映画あるいは美術

鏑木清方展

(写真1 <築地明石町>=会場で販売されていた絵はがきから引用) 没後50年 東京国立近代美術館で開かれていた。大変な人気ぶりで、日時指定制の入場だったのだが、それでも入場には長い列ができていた。 清方は、近代日本画を代表し、しばしば上村松園と並…

送電鉄塔研究会著『送電鉄塔ガイドブック』

鉄塔ワールドへの誘い 送電鉄塔とは、郊外などで見かけるように長い距離に張り巡らした送電線を中継するための設備。発電所から変電所を経由して送電するために送電線は超高圧となり、送電距離も長いところから送電施設は大型となる。 本書はこの送電鉄塔に…

空也上人と六波羅蜜寺展

(写真1 空也上人立像=会場で販売されていた絵はがきから引用) 東京国立博物館で特別展 空也上人立像(重要文化財)は、なかなかユニークな仏像だった。鎌倉中期、運慶の四男康勝の作とされ、遊行中の姿をリアリティたっぷりに表現されている。像高は12…

砂川文次『ブラックボックス』

(写真1 作品所収の文藝春秋3月号表紙) 芥川賞受賞作 現代の若者が描かれている。ただし、そこに社会に対する破壊はない。文章にも若者特有の暴力はない。しかし、ちょっとしたことですぐに切れる。これが現代の若者特有というならその通りだ。 自転車便…

映画『ひまわり』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) ウクライナ支援上映 第二次世界大戦下、愛し合っていたジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)の夫婦。 アントニオは招集されてロシア戦線に出征することになり、ミ…

映画『ドライブ・マイ・カー』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 難解な映画 西島秀俊演ずる演出家兼俳優家福悠介。ウラジオストックに出張のため成田空港に着いたところ欠航とのこと。やむを得ずいったん帰宅すると、妻は男を連れ込んで浮気の様子。仕方なく静かに家を…

ピアノ教室のコンサート

(写真1 コンサートの模様) 練習の成果披露 ピアノ教室のコンサート(発表会)が練馬文化センターで行われた。毎年この時期の恒例で、1年の練習の成果が披露された。 34人が出演していて、我が家からは4人の孫が出た。6年生(女)、4年生(男)、3…

開館した大阪中之島美術館

(写真1 大阪中之島美術館外観) 超コレクション展 大阪中之島美術館が2月2日開館し、開館記念として超コレクション展が3月21日まで開かれていた。 美術館は、中之島にあり、国立国際美術館の隣り。四角いキューブ状の黒い建物が特徴。京阪渡辺橋から…

ベートーヴェン交響曲第8番

(写真1 ベートーヴェンの第8番が収録されている6人の演奏家のベートーヴェン交響曲全集) 再発見の魅力 再発見などというと、ずぶの素人が生意気だが、実際、なかなかいいのだった。 ここ数ヶ月、毎日、ベートーヴェンのシンフォニーばかり聴いてきた。 …

映画『CODAあいのうた』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 心温まる家族の物語 漁師の一家。父と母と兄はろうあ者で、妹のルビーだけが健聴者という家族。毎日船を出して漁を営んでいる。ユーモアの絶えない家族で、ルビーは、耳の聴こえない家族のための手話によ…

ベートーヴェン聴き比べ

(写真1 聞き比べを行ったCD全集。手前がバレンボイム) 第5を7人の指揮者で ここのところ毎日ひたすらベートーヴェンのシンフォニーだけをCDで聴いてきた。ベートーヴェンに交響曲は9曲。それを著名な指揮者ごとに聴き通してきた。 選んだ指揮者は…

フェルメール<窓辺で手紙を読む女>

(写真1 修復後の<窓辺で手紙を読む女>=会場で販売されていた絵はがきから引用) 17世紀オランダ絵画展 東京都立美術館で開かれている。 ドレスデン国立古典絵画館所蔵作品が集められており、目玉は、フェルメール<窓辺で手紙を読む女>。 この<窓辺で手紙…

ウクライナ応援コンサート

(写真1 数千人も集まったコンサートの様子) コバケンとその仲間たちオーケストラ 3月11日、池袋駅西口の野外劇場グローバルリングシアターで行われた。会場は、全席立見による入場無料で、会場には黄色と青色のウクライナの国旗を持った人々が三々五々…

アーノンクールのベートーヴェン

(写真1 交響曲全9曲を収録した5枚のCD。奥は80枚のCDボックス) ベートーヴェンを熟知 ニコラウス・アーノンクール(1929-2016)は、オーストリアの指揮者,チェロ奏者。古楽器の研究、演奏でも知られる。ベルリン・フィルやウィーン・フィル…

伊藤博康『日本珍景踏切』

魅惑の踏切ワールド 全国の踏切のユニークな写真が載っている。 珍景あり、絶景あり、花畑の踏切、都会の踏切、不思議な踏切もある。よくぞここまで踏切を集めたものだと感心した。全国各地130ほどもの踏切が紹介されていてすべてカラー写真である。この…

バレンボイムのベートーヴェン

(写真1 CD全集のパッケージ外装) ベートーヴェンを熟知 トスカニーニ、フルトヴェングラー、カラヤン、ワルターと続いてきたベートーヴェンの交響曲。いずれも巨匠揃い。特にベートーヴェンを振らせて名だたる評価の持ち主ばかり。そして5人目はバレン…

ワルターのベートーヴェン

(写真1 CD全集のパッケージ外装) 三大巨匠の一人 20世紀を代表する指揮者と称され、トスカニーニ、フルトヴェングラーと並んで三大巨匠の一人とされるワルター。 ブルーノ・ワルター(1876-1960)は、ドイツの指揮者。ユダヤ系であり、ナチス…

中谷一郎『JAXAの先生!宇宙のきほんを教えてください!』

あなたの常識は宇宙の非常識 民間人ですら宇宙旅行を楽しむ時代になってきたが、宇宙はまだまだ深淵。謎だらけと言えるほどで、宇宙への疑問は増すばかり。 本書ではその宇宙とは何か解きほどいてくれている。ただ、タイトルだけ見ると、こども向けのやさし…

カラヤンのベートーヴェン

(写真1 CD全集のパッケージ外装) 〝帝王〟とベルリンフィル トスカニーニ、フルトヴェングラーと続いてきたベートーヴェンの交響曲。ついにカラヤンの登場である。 ベートーヴェンのシンフォニーをカラヤン指揮のベルリンフィルハーモニー管弦楽団が演…

『教科書名短編科学随筆集』

科学者の名エッセイ 中学校の国語教科書に載った科学者のエッセイを集めた。 エッセイは、寺田寅彦、中谷宇吉郎、湯川秀樹、岡潔、矢野健太郎、福井謙一、日髙敏隆の6人。科学者として一流であるばかりか、いずれも名文家としても知られる錚々たるメンバー…

フルトヴェングラーのベートーヴェン

(写真1 CD全集のパッケージ外装) ワーナーがレーベルの交響曲全集 ベートーヴェンの交響曲。トスカニーニに続いてフルトヴェングラー。 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)は、ドイツの指揮者。20世紀を代表する指揮者とされ、し…

岩田徹『一万円選書』

北国の本屋が起こした奇跡の物語 著者は、北海道砂川市のいわた書店の店主。町の小さな本屋が経営に四苦八苦する状況下、いわた書店も例外ではなく、危機的状況の中でいわた書店が編み出したのは〝一万円選書〟という仕組み。 一万円選書とは、客一人ひとり…

逢坂冬馬『同士少女よ敵を撃て』

独ソ戦下赤軍女性狙撃手たち 独ソ戦下、ソ連赤軍に編成された女性狙撃手たちが描かれている。 すさまじいまでの戦闘描写、狙撃のリアリティ、ディテールの深さが見事で第一級の物語であり、とにかく面白くて傑作である。 ドイツ軍によって村を焼かれ、親を殺…

トスカニーニのベートーヴェン

(写真1 CD全集のパッケージ外装) シンフォニー全曲NBC響で ここのところベートーヴェンづいていて、次から次とバートーヴェンばかり聴いている。特に交響曲。 ということでまずはトスカニーニ。アルトゥーロ・トスカニーニ(1867-1957)は、…

池澤夏樹『また会う日まで』

(写真1 テーブルいっぱいに広げた連載531回分の切り抜き) 朝日新聞朝刊連載小説完結 2020年8月1日から朝日新聞朝刊に連載されてきた池澤夏樹作『また会う日まで』が1月31日付で完結した。1年半に及ぶ連載で、連載回数は531回だった。この…

『探訪 貨車駅舎』

古い貨車を駅舎にした駅巡り 鉄道写真で知られるレイルウエイズグラフィックの編著。だからだろうが、貴重な写真が多く、丁寧な編集が素晴らしい。B5判の大きな誌面に写真とイラストが豊富で、見ていて楽しい。 貨車駅舎とは、鉄道貨物で使用されていた古…

映画『リスペクト』

(写真1 映画館で配布されていた散らしから引用) 極上の音楽エンターテイメント ソウルの女王と呼ばれ史上最も偉大な100人のシンガーの第1位に選ばれた伝説的歌手アレサ・フランクリンの半生が描かれている。アレサを演じたのがアカデミー賞、グラミー…

清水浩史『深夜航路』

午前0時からはじまる船旅 深夜航路とは、著者の定義によれば、深夜帯(午前0時から3時まで)に出航する定期航路のこと。このため、極端なところでは、苫小牧23時59分発八戸行のような22時台や23時台に出航する航路は含めていない。到着や寄港が深…

六町ミュージアム フローラ

(写真1 美術館外観) 足立区の私設美術館 最寄り駅はつくばエクスプレス六町駅。徒歩3分。 開館して10年になるという私設の美術館。 玄関を入るとロビーの大きなガラス窓から中庭の浅く水を張った水盤が見通せる。周囲がすり鉢状に土盛りされていて、芝…

藪本晶子『絶滅危惧動作図鑑』

見かけなくなった動作集 うっかりすると〝絶滅危惧動物図鑑〟と早とちりしてしまうが、こちらは今は見られなくなった動作を集めたもの。 井戸水をくむ、薪を割る、火をおこす、洗濯板で洗う、カツオ節を削る、チャンネルを回す、お風呂をかき混ぜる、切符を…