ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

静岡県立美術館

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(写真1 ロダン<カレーの市民>の展示)

素晴らしいロダンのコレクション

 美術が好きで、美術館にはしばしば足を運ぶ。旅行などで地方へ出かけたときには、その地の美術館を見学する。時間が許す限り駆け足でめぐることもあれば、あらかじめ美術館を旅程に組み込むことも少なくない。だから、県美の大半はこれまでに見てきているのではないか。美術館にはそこでしか見られない作品があり、チャンスは貴重だと考えている。
 しかし、静岡県立美術館にはこれまで一度も来たことがなかった。それはなぜかというほどに機会がなかった。静岡にはたびたびやって来ていたのに。

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(写真2 静岡鉄道県立美術館前駅ホームにはロダン<考える人>が)

 静岡県美への最寄り駅は静岡鉄道の県立美術館前駅。新静岡と新清水を結ぶローカル私鉄。新静岡と新清水のちょうど中間くらい。ここから徒歩15分くらい。バス便もあるが本数は多くない。

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(写真3 県立美術館前駅から美術館へと続く美しいケヤキの並木道)

 しかし、ここは是非歩いたほうが良い。美術館へのアプローチはすでにここから始まっているのである。駅前から緩い坂道になっていて、登り坂だが、美しいケヤキ並木が続いている。両側には住宅やしゃれたカフェ、ブティックなどが点在していて、歩くのが楽しくなる。

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(写真4 舟越保武<杏>)

 10分も歩かないうちに県美の敷地に入る。ここからのプロムナードがじつにいい。この日は冬だったから残念だったが、カンツバキ、ヒメシャラ、ヤマモモ、キンモクセイ、ドウダンツツジ、モクレン、イチヨウザクラ,サルスベリなどと季節の花が植えられている。さぞかし美しいのだろうと思われた。

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(写真5 佐藤忠良<みどり>)

 このプロムナードには、樹木の間に彫刻が置かれている。舟越保武<杏>、佐藤忠良<みどり>などとある。舟越の<杏>は先日、サトヱ記念美術館で見たばかりだった。また、戦後日本を代表する彫刻家である舟越と佐藤は美校(後の芸大)で同期であり、親友だった。ほかにも内外の一流彫刻家の作品13体も展示してあった。この屋外彫刻を見るだけでもこの美術館を訪れた価値があるというほどだった。

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(写真6 ロダンの作品が32体も収蔵してあるロダン館の展示)

 この美術館の自慢はオーギュスト・ロダンのコレクションであろう。本館とは別にロダン館が設けられており、何と32体もの作品が展示してある。これほどのロダン作品は、パリのフランス国立ロダン美術館を除けば世界屈指のものであろう。ロダン美術館とは友好関係にあるということである。
 吹き抜けになったガラス天井の明るく広い展示室には、ロダン作品がびっしりと配置されている。

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(写真7 ロダン<カレーの市民>のうちジャン・デール)

 世界的にも知られた作品が多くて枚挙にいとまがないが、圧巻は<カレーの市民>。英仏戦争カレー包囲戦におけるカレー市民6人の英雄を描いた作品。上野の国立西洋美術館にもあるが、西洋美の作品は6人がひとかたまりになって台座の上に立っているが、県美の作品は、1体ずつがバラバラに大きな円を描くように立っている。しかも、6体のうち1体ユスターシュ・ド・サン=ピエールだけはちょっと離れてあった。
 いずれにしても、もともとエディション数の少ない作品であってみれば大変貴重なものだし、しかも、目の高さで見られるというのも他の美術館にはないありがたさがある。

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(写真8 ロダン<考える人>=これは大サイズ)

 ほかにも<地獄の門>があったし、<考える人>に至っては3種類あるサイズすべてがそろっているというのも大変貴重なもので、展示してあった大サイズはさすがに迫力があった。
 なお、この日は企画展としてムーミン展が開催されていて、コレクションの展示はほとんどなかった。このため、伊藤若冲<樹花鳥獣図屏風>や横山大観<群青富士>なども残念ながら見られなかった。

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(写真9 静岡県立美術館外観)