ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

三保の松原の清水灯台

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(写真1 地元では三保灯台と呼ばれている清水灯台の美しい姿)

八角形の美しい灯台

 通称三保灯台と呼ばれる清水灯台は、三保半島の東端に位置する。一帯は、世界遺産三保の松原で知られる景勝地であり、灯台は松林の中にたたずんでいる。
 清水灯台へは、東海道本線の清水駅からバスが出ている。静鉄ジャストライン三保山の手線で約30分、終点東海大学三保水族館下車。
 三保半島は、清水港を囲むように、まるで釣り鉤のような形をして左回りに大きく湾曲している。かつては半島の先まで清水駅から国鉄清水港線という鉄道路線が出ていた。もっとも、廃線直前には1日1往復という希有なダイヤで、このため〝国宝級〟と揶揄されていた。清水港線の終点三保駅で下車すると、駅前は造船所だった。

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(写真2 三保の松原から見た海の向こうに富士山)

 停留所からすぐに海岸に出て、海沿いの道を右手に進む。松林が続き、遊歩道・自転車道になっている。左が海で、海の向こうに富士山がくっきりと見える。この日は快晴だったが、それにしてもこれほど美しい富士山を見ることはまれ。感嘆するほどの美しい姿だ。
 しかし、ちょっと待てよ、清水に来て富士山が海の向こうに見えるのはおかしくないか。地図が頭にないとちょっとまごつく。つまり、半島は大きく湾曲しているために清水の市街は対岸に見えるのである。
 海辺では釣りをしている人の姿が多い。隣同士が接近していて、糸が絡まるのではないかと心配になるほどだ。
 この日は冬だったからそれほどでもなかったが、これが夏だったならばこのあたりは白砂青松ではないか。
 途中に、海岸に飛行場の滑走路が見えた。三保飛行場というのだそうで、赤十字の飛行訓練のためのものだということである。付近には、「甲飛豫科練之像」という予科練生徒を描いた銅像が建っていたから、戦時中には予科練の飛行場だったのであろう。

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(写真3 松林の中にたたずむ灯台)

 20分ほど歩いたころ、松林の切れ間にくっきりと建つ白堊の灯台が見えた。大型のものではないが、とても美しい。高さは18メートルほど。八角形をしている。両腕を伸ばして測ってみたところ、1辺は両腕を伸ばして少し余るほどだから、170センチである私の身長から類推すると約150センチほどか。ということは、塔の太さは12メートルということになる。
 塔を見上げると、灯室に小振りなレンズが見える。第6等フレネルレンズということである。このごろでは、こういう小さな等級のレンズはLEDに変わっていることが多いから、かえって珍しいくらいだ。

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(写真4 塔頂の風見鶏は羽衣伝説にちなんで天女である)

 そして面白いのは、塔頂の風見鶏が天女になっている。三保の松原といえば羽衣伝説であり、それに倣ったものであろう。

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(写真5 清水灯台の初点銘版)

 初点銘版には、「初点明治45年3月、改築平成7年3月」とあった。何でも、鉄筋コンクリート造の灯台としては日本で最も古いものだそうで、それで、歴史的文化的価値が高いところからAランクの保存灯台となっている。
 灯台は、大雑把には、清水港の港口と外海である駿河湾の境目あたりに位置しているようで、大きな港である清水港の安全を担っているのであろう。
 また、灯台からも左に富士山が見えた。真っ白い灯台と冠雪した富士山が一枚に見えて素晴らしい景色となっていた。実は、灯台の後ろ隣には三保園というホテルがあって、ここの3階からならば、灯台と富士山が一直線に見えるのではないかと期待してホテルを訪ねたところ、この日は残念ながら営業をしていなかった。コロナの影響で、このごろではこういうことが少なくない。
 さすがは駿河の海、穏やかな気候で、ダウンのコートでは汗ばむほどの陽気だったし、風光明媚なところに建つ灯台は、灯台の持つ厳しさは感じられなくて、まるで天女の降り立つ塔のようにも思えたのだった。(2021年2月10日取材)

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(写真6 灯台の奥に富士山が遠望できた)

<清水灯台メモ>(灯台表、現地の看板、ウィキペディア等から引用)
航路標識番号[国際標識番号]/2473[M6248]
位置/北緯35度00分35秒 東経138度31分50秒
名称/清水灯台(愛称三保灯台と看板にある)
所在地/静岡県静岡市清水区三保
塗色・構造/白色塔形、コンクリート造
レンズ/第6等フレネル式
灯質/群閃白光 毎20秒に2閃光
実効光度/5万カンデラ
光達距離/14海里(約26キロ)
塔高/17.73メートル
灯高/21.00メートル
初点灯/1912年(明治45年)3月1日
管轄/海上保安庁第三管区海上保安本部清水海上保安部
備考/Aランク保存灯台、近代化産業遺産、土木遺産