ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

笠間日動美術館

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(写真1 笠間日動美術館外観)

充実したコレクション

 銀座の日動画廊の創業者である長谷川仁・林子夫妻が縁の笠間市に建てた私設の美術館。日本を代表する画商だけにさすがに素晴らしいコレクションで知られる。
 笠間城跡の山麓にあり、市街中心の笠間稲荷神社にも近い。隣が、笠間藩家老だった大石邸跡である。〝かさま観光周遊バス〟のルート上にあり、笠間観光の代表的なスポットとして人気も高い。
 広大な敷地にギャラリーが点在していて、周遊バスの停留所から入るとまずは企画館。企画展示のための展覧館で、この日は「異国の景色」という展覧会が行われていた。
 パリを中心に海外で学んだ画家たちの作品が展示してあった。膨大なコレクションから選りすぐったもののようだが、佐伯祐三<パリの街角>(1927)、田村能里子<陽炎女>(1984)などとあった。

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(写真2 鴨居玲<私>=美術館で販売されていた絵はがきから引用)

 また、鴨居玲については1室が当てられていて、作品のみならず鴨居の画業がわかるような内容で、鴨居に関するこれほどのコレクションは、生まれ故郷金沢の石川県美に次ぐものではないかと思われた。展示品の中には司馬遼太郎のメモがあって、そこには、その美しさ、そのあまりにも大胆な個性の表現にである、などと絶賛されていた。
 3階建ての企画館からは通路で野外彫刻庭園を挟んでフランス館、パレット館へとつながっている。

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(写真3 野外彫刻庭園の様子。眼下に笠間市街が望める)

 野外彫刻庭園では、緩やかな斜面に彫刻が林立している。眼下には笠間市街が遠望できた。作品の中には、舟越保武の<原の城>があった。有名な作品だが、いつ見ても舟越の精神性宗教性がうかがわれて印象深い。

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(写真4 舟越保武<原の城>)

 なお、館内には舟越の作品が多数あって、それも、代表作<春>や<C夫人>などと並んで、<長谷川林子像>が大理石製とブロンズ製の2体もあった。創設者長谷川夫妻はよほど舟越と親交が深かったものであろう。

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(写真5 アンディ・ウォーホル<C夫人の肖像>)

 フランス館は常設展示。ユトリロ<パリの通り>、ゴッホ<サン=レミの道>や、モネ、ドガ、ロートレック、ルノワール、ピカソからアンディ・ウォーホル<C夫人の肖像>などとあって、いやはや充実したコレクションには驚くばかりだ。
 デッサンが集められたデッサン室には、松本竣介の<少年>(1946)のデッサンがあって、結局、ここでは、好きな画家と彫刻家である松本竣介と舟越保武の作品が同時に見られて堪能できた。ちなみに、松本と舟越は盛岡中学(現・盛岡一高)の同窓生である。
 なお、この美術館で感心したのは、作品の写真撮影が許されていること。撮影禁止の作品にはカメラに横線が入ったアイコンが付されていてわかりやすい。

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(写真6 正面中庭に建つ舟越保武<春>)