シリーズ 世界の岬と灯台紀行
(写真1 堂々たる老鉄山灯台)
渤海と黄海の分界線
遼東半島は、中国東北部遼寧省の南部、黄海と分かつように渤海に突き出ている。かつて、満州国があった時代、日本が関東州といってこの地域を支配していたことがある。
半島の南端が大連であり、さらにその最南端が現在は大連市内に含まれる旅順ということになる。日本にとってはなじみ深いところだが、現在でも大連は日本からの進出企業が多く貿易港として日本とは深い関係にあるし、旅順も軍港として栄えている。この半島の先端が老鉄山である。
旅順は大連から約45キロ。かつては鉄道もあったらしいが現在は廃止されており、自動車で約1時間半の道のり。
(写真2 老鉄山公園の入り口。老鉄山灯塔とある)
半島の先端一帯は老鉄山岬の園地になっていて、老鉄山公園として整備されている。入り口には立派な門があって、老鉄山灯塔と看板が出ている。灯塔とは日本でいう灯台のこと。
(写真3 太くがっしりした老鉄山灯塔)
坂道を登っていくとほどなく灯台に。白く太くがっしりした灯台だ。中国語表記だが、塔の高さは14.2公尺(日本でいうメートルのこと)、外径は6公尺とある。灯台の概要説明に灯塔の太さまで説明してあるのは日本ではないことだが、しかしこれはいい。日本でも是非表示してほしいものだ。鉄製のようだ。現役の灯台だが、1892年フランスが設計製造し、1893年イギリスが建造したとのこと。当時、世界著名灯台100塔の一つに数えられていたという。
また、灯台は海抜86.7メートルの高さにあるとのことだが、なるほど見晴らしがいい。眼前遮るもののない大海原である。いつもの私流の表現なら両腕を広げて余るほどだから200度もの眺望か。
なお、ここは渤海と黄海を分かつところ。渤海は遼東半島と山東半島に囲まれたところで、黄海はその外側と朝鮮半島に囲まれたところといえる。中国は広大な国土だが、半島の面積では山東半島が第1位、遼東半島が第2位とのこと。
遼東半島と山東半島は、直線距離で120キロほどか。この間を渤海海峡あるいは老鉄山水道というらしいが、この二つの半島が渤海と黄海を分断していて、老鉄山岬の先がちょうど分界線となっている。
大陸から海へと流れ込むせいか渤海は黄色っぽく見えて、青い海の色のままの黄海とはくっきりと分かれて見えるらしいが、この日は潮の流れがよくなかったのか私にはその違いは分からなかった。いかにも奇観と言うことで、黄渤海分界線景区として人気になっている。
なお、これも中国語表記だが、この岬の先端で(つまり灯台の位置ではないということらしい)、座標は東経120度44分33.3秒、北緯37度49分50.2秒となっている。経度から先に標記するというのも日本にはないやり方だが、それはともかく、緯度としては日本の牡鹿半島のほぼ先端に相当するようだ。
(写真4 旅順口の碑)
旅順は軍港であり、しばらく外国人の訪問を制限していたが、現在は開放されている。二〇三高地や乃木-ステッセル会見場跡などもあってとりわけ日本人にとってはある種の感慨がある。
(写真5 高台から見下ろした旅順の港。湾口が狭く天然の要塞ぶりがわかる)