ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

錦川と錦川鉄道

シリーズ 川は鉄路の友だち

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(写真1  どこまでも右窓に錦川が続く錦川清流線。路線名に恥じない素晴らしい景観=2017年5月25日

錦川と並行する錦川清流線

 川は鉄路の友だちということでは、錦川に沿って走る錦川鉄道は代表例だ。路線名が錦川清流線というのもうなずける。
 錦川は、別名岩国川と呼ばれるように、島根県との県境に近い山口県の北東部に発し、大きな蛇行を繰り返しながら錦町で南下して瀬戸内海に注いでいる。有名な錦帯橋は下流でこの川に架かる橋である。長さ110キロ。
 錦川鉄道錦川清流線は、ほぼ全線が錦川に沿って走っており、岩徳線の川西から錦町の間を結んでいる。旧国鉄・JR西日本の岩日線で、全長32.7キロ、駅数は13。ただし、すべての列車は岩国発着である。
 錦川清流線は、岩国駅0番線からの発車。1番線の端を一部切り取ったようなホーム。岩国を出るとすぐに西岩国。なかなか趣のある駅舎で、かつてはここが岩国駅だった時代もあった。また、錦帯橋にはここが近い。
 次いで川西。ここまでが岩徳線で、つまりここからが錦川清流線。そして最初の駅が清流新岩国駅。山陽新幹線新岩国駅と近接している。私はここが御庄駅と名乗っていた時代にここで新幹線に乗り換えたことがあるが、二つの駅は徒歩で10分近く離れており、しかも、新岩国は新幹線駅にありながら当時はまだ駅前は閑散としていた。次にここを通った時には駅名は清流新岩国に変わっていた。
 ここから山地に分け入り、右窓に錦川が現れる。そして、列車は行けども行けども右手に錦川を見て並行して走っている。

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(写真2 車窓からでも川底がはっきりと見える)

 線名その名の通りに清流である。川底が車窓からでもはっきりと見える。緑が美しく、乗っていて清々しくなる。

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(写真3 5段に流れ落ちる清流の滝)

 なかなかサービスのいい鉄道で、ところどころで車内放送で観光案内もしてくれる。北河内と椋野(むくの)間では左窓に滝があり、やや速度を落としてくれた。5段の滝で、清流の滝と名付けられているという。

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(写真4 唯一列車交換が行われた北河内駅)

 また、北河内では列車交換のため3分ほど停車していた。単線ながらこれが唯一の列車交換で、それほど運転本数が少ないということにもなる。
 どこまで行っても錦川は右窓にあり、広い川幅なのだが深さはさほどないようで、清流に対岸の景色が映っている。私は、川は鉄道の友だちという言葉をよく遣っていて、全国には素晴らしい川の景観を車窓に見せてくれる路線は少なくないが、これほど終始川と寄り添って走っている路線も少ない。

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(写真5 錦川清流線終着駅錦町=1998年7月3日)

 それが、ついに川を渡ったと思ったら、終点錦町だった。岩国から57分、川西からなら48分のところだった。片面1線のホームがあるだけだったが、ホームには岩日線時代の鉄道信号機が残っていた。
 なかなか落ち着いた終着駅で、きれいな駅舎となっており、町の情報拠点の役割も担っているようだった。
  ところで、岩日線は錦町よりもう少し先まで工事が進んでいたのだが、ついに開業することがなかった。ところが、面白いことにこの未完に終わった路盤を利用し、「とことこトレイン」なるゴムタイヤの遊覧車を走らせているらしい。訪れた日は平日のため運行されていなかったが、なかなかユニークな事業を行っているものだと感心した。それも運行距離が6キロもあるというから素晴らしい。
 折り返し列車の都合があってゆっくりできなかったが、もう少しぶらぶらしたいという気にさせる終着駅だった。

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(写真6 錦町駅に停車中の錦川清流線列車)