ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

絵本『がんばれ!あかい しゃしょうしゃ』

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アメリカの絵本

 遊びに来ていた孫を連れて行った本屋で、車掌車を描いた絵本を見つけた。海外の絵本を揃えたコーナーだったのだが、〝しゃしょうしゃ〟の文字が目に入った。手には取ったものの、買うかどうかについては多少の躊躇がなかったわけでもなかったが、孫に読んで聞かせるという言い訳を自分自身にしてレジに並んだ。それにしても、いかに車掌車好きとは言え、絵本にまで手を出すとはいささか重病か。
 先頭は大きな黒い蒸気機関車。赤とグレーの貨物車2両、黄色とオレンジ色のタンク車2両、石炭車2両、材木を積んだ長もの車などと続き最後が赤い車掌車。沿線の子どもたちは蒸気機関車などには手を振っているのに、車掌車は最後だから子どもたちの関心が届かない。しかしあるとき、列車が急な山にさしかかったところ、機関車は登り切れなくて坂の途中で止まってしまい、列車はずるずると後退していった。すると、車掌車は力一杯ブレーキをかけて踏ん張ったのだったという筋立て。
  ここで大事なのは、車掌車にブレーキが付いていたということ。ブレーキの付いていることが車掌車の車掌車たる所以なのである。この絵本の作者はよくぞ車掌車の構造と機能を知っていた。
 作中の車掌車は赤い色をしているが、アメリカの車掌車には多彩な色があるようで、ブルー、イエロー、グリーンなどと鉄道会社によって異なるようだが、レッドがもっともポピュラーのようだ。
 アメリカでも車掌車は姿を消しつつあるようだが、車掌車に対する根強い人気があるようで、数多くの車両が保存されているとのこと。
 それにしても、絵本にまで車掌車が登場するとは、よほど子どもたちにも車掌車が支持されているということもであり、日本では折角の保存車両も次第に廃車処分にされている現実を考えると、大変羨ましいことだ。
 また、アメリカの車掌車は、長距離を走ることを考慮して、洗面台、トイレに加えベッドやソファも付いていたらしい。こうなるともう〝移動書斎〟にしたいという私が理想とする車掌車ではないか。1両購入したいが、アメリカから送ったのでは運賃が高いだろうななどと馬鹿なことを考えていた。
 原題はTHE LITTLE RED CABOOSE 。作マリアン・ポター、絵ティポル・ゲルゲイ、発行はランダムハウス。マリアンの父親は鉄道会社に勤めていたところから機関車や鉄道が出てくる作品が多いらしい。ランダムハウスはアメリカのよく知られた大手出版社。本書は1953年の刊行。日本語版は訳こみやゆう。2018年の刊行。
(発行PHP研究所)