ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

増毛駅と増毛灯台

シリーズ 駅情景と灯台慕情

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(写真1 増毛駅に停車中の留萌本線列車と後背の高台に増毛灯台が見える。この風景も今や見られない=2003年7月19日)

駅と灯台が一枚の写真の中に

 増毛駅と増毛灯台――一枚の写真の中に鉄道の駅と灯台が収まっているのは極めて珍しい。精査したわけではないが、日本で唯一ではないか。この場合、防波堤灯台は含めず沿岸灯台でということだが。あるいは、駅に限らず鉄道風景も含めてということなら、八戸線の鮫駅付近と鮫角灯台、五能線の千畳敷駅付近と大戸瀬埼灯台、道南いさりび鉄道渡島当別駅付近と葛登支岬灯台、函館本線渡島砂原駅付近と砂埼灯台などが思いつくし、それも、海上から撮れば、きちんと一枚に収まるに違いない。
 そのことはともかく、増毛駅は、かつて留萌本線の終着駅だった。それが、留萌本線のうち留萌-増毛間(16.7キロ、8駅)が2016年12月4日廃止となり廃駅となってしまった。札沼線もそうだったが、端っこばかり廃止にしてしまってまるでトカゲの尻尾切りのようでよろしくない。
 増毛駅は、1921年 (大正10年)開業の古い駅で、増毛はニシン漁で栄えた。
  私はこの増毛駅には三度降り立ったことがある。初めは2003年7月17日で、実はこの時がJR・3セク(旧国鉄)全線完乗達成の瞬間だった。その気になって全国の鉄道をコツコツと乗り歩いて18年が経っていた。格別の達成感もなかったが、大きな肩の荷を下ろしたような気分だった。

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(写真2 横殴りの吹雪の増毛駅=2012年2月10日)

 二度目は、2012年2月10日。この日は猛烈な吹雪で、深川から乗ってきた留萌本線増毛行きの列車は、途中、留萌駅で停車するとそのまま運転続行不可能となり、増毛までの切符を持っていた私一人のために代行タクシーを出してくれた。もちろん、増毛駅には降り立ったのだが、タクシーで乗り付けたわけで、果たしてこれが降り立ったとは言えるものかどうか。増毛駅は、相変わらず止むことのない吹雪が舞っていて、駅前の風待食堂など雪に埋もれそうになっていた。

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(写真3 〝風待食堂〟の看板がかかる観光案所=2013年7月19日)

 三度目は2013年7月19日。初めて増毛駅に降り立ってからすでにちょうど10年も経っていて、駅舎はそのままだが周囲の様子が随分と変わっていた。駅舎内にあったそば屋がなくなっていたし、代わって地元産品の店が出ていた。また、映画『駅 ステーション』に登場していた、駅前の食堂が観光案内所となっていたし、映画で増毛ホテルとなっていた日本通運の建物は跡形もなくなっていた。
 最後に降り立ったときは、片側1面1線のホームと車止めがあるだけの閑散とした構内だった。ただ、多くの側線があって往事の繁栄が偲ばれた。
 駅前には街路が延びていて、賑やかだった当時の建物が多く残っていて風情のあるものだった。その中に、最北の造り酒屋として知られる國稀(くにまれ)の店があった。

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(写真4 増毛灯台=2003年7月17日)

 駅から、裏手にあたる坂道を5分ほど登っていくと、住宅街の先に灯台があった。増毛灯台である。四角い塔形で、白地に赤横帯が1本入っている。初点銘版には明治23年12月とあった。塔高はさほどないが、高台にあるから灯火標高は約46メートルとある。
 灯台から眼下を眺めると、増毛の街と増毛港がすぐに見えた。現在のように道路が通じていなかった時代、雄冬に行く船はここから出ていた。ただ、時化て欠航になることが多かったらしく、風待ちの客のための旅館が駅前に数軒あったようで、現在でも駅の真正面に風格のある旅館がどんと構えているのを見て取れる。
 列車が増毛駅に来なくなってから早くも3年余。しかし、駅舎も線路もきちんと残されているようで、それも観光の拠点として整備されているようだ。思い出深い駅だし、いつまでも哀惜の念が強いところ。いつの日か訪れてみたいとは思うが、鉄道がなくなってしまって果たしてどうやって行けばいいものか。

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(写真5 手にした幕には〝JR・3セク鉄道全線踏破達成〟とある。この写真は家内が写してくれた)

<増毛灯台メモ>(灯台表、現地の看板、ウィキペディア等から引用)
航路標識番号[国際標識番号]/0566[M6970]
位置/北緯43度51分3秒 東経141度31分6秒
名称/増毛灯台(ましけ)
所在地/増毛郡増毛町
塗色・構造/白地に赤横帯1本コンクリート造、四角塔形
光源/LB-M30型灯器
灯質/単閃白赤互光 毎16秒に白1閃光赤1閃光
実効光度/白光18.0万カンデラ
     赤光7.5万カンデラ
光達距離/白18海里、赤16海里
塔高/13.2メートル(地上 - 塔頂)
灯火標高/46.4メートル (平均海面 - 灯火)
初点灯/1890年12月25日(初点時白色木造四角塔形)
管轄/海上保安庁第一管区海上保安本部留萌海上保安部