ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

礼文島の岬と灯台

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(写真1 日本最北限の地スコトン岬。沖は灯台のあるトド島)

最北の離島を訪ねて①

 利尻・礼文――なんと美しい響きか。日本地図を広げて最北の日本海に浮かぶこの二つの島に行ってみたいとは誰しも願うこと。宗谷本線が日本最北の終着駅稚内を目前にサロベツ原野にさしかかると左窓に利尻富士が見えてきて旅情がいや増す。二つの島はひとくくりに呼ばれることが多いが、それぞれに個性的で二つとも続けて訪ねてみたい。
 二つの島ともに幅約10キロの利尻水道を挟んで南北に連なっており、北にあるのが礼文島(れぶんとう)。稚内の西方約60キロの日本海上に位置する日本最北の島。

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(写真2 ハートランドフェリー「サイプリア宗谷」)

 礼文島へは、稚内から船で渡った(2009年10月13日)。稚内港14時30分発礼文島香深港行きハートランドフェリー「サイプリア宗谷」。出港するやたちまち豪雨となり、赤と白の縞模様の稚内灯台が波打ち際に屹立していた。日本で二番目に高い灯台だが灯台には見えにくい。灯台は、普段は陸地側から見るばかりで、海上から見ることは少ない経験だからとても興味深かった。

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(写真3 船上から見た稚内灯台)

 波が高く海は荒れている。船は大揺れに揺れた。30分もしないうちに礼文島は見え始めていたのだが、そこからが長くてなかなか近づかない。船というのはそういうものなのだろう。ぴったり定刻通り16時25分香深港に到着した。ほぼ2時間。夕暮れ寸前でフェリーターミナルがかすんでいる。

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(写真4 船上から遠望した礼文島)

  この日はフェリーターミナルにほど近い旅館に泊まったが、斜め向かいが公営温泉「うすゆきの湯」で、礼文島唯一の温泉は2週間前に開業したばかりといい、無色無味無臭の単純温泉だった。
 礼文島は、東西6キロ、南北21キロの平べったい島。中央部にある礼文岳が標高490メートル。人口は3千ほど。礼文郡礼文町は一島一郡一町である。島を南北に縦断する道路は東側を走っており、西側は断崖になっているようだ。香深港は島の東南に位置する。
 翌日は朝8時からレンタカーで島内を巡った。礼文島は、まるでクワガタのような形をしており、北に向かって2本の角が鋭く突き出ており、左がスコトン岬で、右が金田ノ岬だ。
 まずはスコトン岬をめざした。須古頓ともあてるようだが、礼文島最北端であり、日本地図をながめながらかねて一度は訪ねたいと思っていた岬だ。
 すでに観光シーズンははずれていたから道はすいていて、長いアプローチの末岬に着いた。なかなかの眺望で、思い描いていたとおりの岬らしい風情がある。左右両手を広げたよりも視界は開けているから遮るもののない240度もの眺望か。
 視界が良ければサハリンも見えるというが、この日は晴れてはいるものの島影は見えなかった。

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(写真5 〝最北限の地スコトン岬〟の木柱と1キロ沖合にトド島)

 岬の1キロほど沖合に小さな島がある。トド島といい、これも平べったい。無人島で、島の西端やや高いところに海驢島灯台が見えた。白と黒の縞模様のようだ。緯度は日本最北端宗谷岬灯台よりはほんの少し南に位置する。

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(写真6 スコトン岬の売店。昆布ソフトの幟が立てられている)

 岬には売店があり、ソフトクリームを食べた。何でもカモメはソフトクリームが好きなのだそうで、そう言えば、1羽のカモメが自分の方に寄ってくるではないか。少し分けてあげたらすぐに一口でぱくついた。
 また、岬の先端近く崖下に民家があって、看板には民宿スコトン岬とあった。日本最北端の民宿ではないか。
 島は、〝花の浮島〟と呼ばれるほどに美しい花々が咲き乱れるようだが、すでに秋になっていたのでレブンアツモリソウやウスユキソウも見られなかった。

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(写真7 10キロに渡って海食崖が連なる澄海岬)

 スコトン岬からは澄海岬(すかいみさき)に寄った。島の西側に位置する岬で、この周辺は海食崖によるもののようで、海岸は切り立っている。その名の通り海は澄んでいて、透明度は非常に高いようだ。海でこれほどきれいな水も珍しい。

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(写真8 スコトン岬から遠望した金田ノ岬。細長く平べったい岬だ)

 澄海岬からは戻るようにして金田ノ岬へ。クワガタの右の角である。船泊湾を挟んでスコトン岬の対岸にあたる。

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(写真9 定期便の運航もない礼文空港)

 岬を目指していたところ、途中に礼文空港があった。随分と日本中の空港に降り立っているが、ここはその名すら知らなかった。定期便の運航はなく、使われることは少ないようだ。ただ、きちんと管理はされているようだった。

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(写真10 〝滑走路の端に灯台?!〟)

 空港を見下ろす高台に登って驚いた。滑走路の端に灯台があるではないか。場所柄、空港施設のようにも思えるが、どう見てもれっきとした灯台である。道らしき道もないし難儀だったのだが、近づいてわかった。白地に赤帯2本。これが金田ノ岬灯台だったのである。高台からは滑走路の端にあるように見えたが、実際は滑走路の端からは少しだけだが離れていた。それはそうだ。

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(写真11 金田ノ岬灯台)

 金田ノ岬そのものは、海沿いに岬を回り込むように道が続いていてあまり風情はない。灯台は高台にあるのである。
 金田ノ岬からは島の南にある元地灯台に寄る予定だったが、クワガタの2本の角で手間取ってしまい、時間がなくなってしまった。香深港から午後のフェリーで利尻島へ渡る計画なのである。
 最後に、香深港を目指していたら、途中、高台に灯台の姿が目に入った。香深灯台である。既視感があったが、小樽の日和山灯台に近似しているように思われた。なお、この灯台は2015年廃止となったようだ。

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(写真12 香深港の高台に香深灯台。現在は廃止されているようだ。なお、データで灯台表とウィキペディア等と違う場合は灯台表を優先している)

 

<礼文島の灯台メモ>(灯台表、ウィキペディア等から引用)

 ◍海驢島灯台
航路標識番号/0513
名称/海驢島灯台(とどしま)
位置/北緯45度28分6秒 東経140度57分7秒
灯質/単線白光 毎3秒に1閃光
塗色・構造/白地に黒横帯2本、塔形
灯高/53メートル
光達距離/7海里
塔高/12メートル
初点灯/1959年11月27日
管轄/第一管区海上保安本部稚内海上保安部

 ◍金田ノ岬灯台
航路標識番号/0516
名称/金田ノ岬灯台(かねだのみさき)
位置/北緯45度27分6秒 東経141度02分0秒
灯質/群閃白光 毎8秒に2閃光
塗色・構造/白地に赤横帯2本、塔形
灯高/27メートル
光達距離/12海里
塔高/12メートル
初点灯/1953年11月
管轄/第一管区海上保安本部稚内海上保安部