シリーズ 駅 情景
(写真1 かつての岩泉駅。「乗って守ろうみんなの岩泉線」の標語が掲げられている=1992年8月14日)
廃線になった駅
岩泉駅は、岩泉線の行き止まりの終着駅だった。
岩泉線は、岩手県の北上山地の山中深く、やや沿岸寄りの路線で、山田線の茂市駅から岩泉駅を結んでいた。全長38.4キロ。駅数は9。
路線は、とにかく勾配とトンネルの連続で、途中、押角駅の手前では30‰という急勾配もあった。狭い谷間を走っているという様子で、この地方出身の友人の話では、谷が深くて日は3時には沈むのだということだった。
1972年の全線開業だが、当初、小本線と呼ばれていた。岩泉から延伸して沿岸部の小本駅(現在の三陸鉄道リアス線岩泉小本駅)につなげる計画もあった。
早くから廃線の対象となっていたが、代替道路未整備のため廃止を免れていたものの、2010年の土砂崩れから運休が続き、2014年そのまま廃線となった。
三重県の名松線と同じような歩みだが、名松線は廃線対象からも免れ、その後の災害の長期運休からも復旧し、今や完全に復活していることに比べると対照的だった。
岩泉駅は、小さな路線の終着駅とは思われないほどの立派な駅舎だった。2階建てで、2階には観光案内所などが入っていたのではなかったか。日本三大鍾乳洞の一つ龍泉洞の最寄り駅である。
(写真2 岩泉駅のホーム)
片側1線のホームがあり、宮古からの直通列車もあった。私が乗ったのは30年近く前だが、この時の時刻表を見ると、この時代の岩泉線の列車は、日にわずか3本の運行だった。
(写真3 岩泉線の起点茂市駅ホーム)