ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

北海道渡島半島東端亀田半島恵山岬

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特集 私の好きな岬と灯台10選

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(写真1 岬の先端に立つ恵山岬灯台=2011年2月11日)

灯台と温泉と素晴らしい景観

 恵山岬は、北海道で、道南の渡島半島の東端、亀田半島に突き出た位置にある。この沖で海域は津軽海峡と太平洋を分かつ。
 渡島半島は、地図で見るとクジラの尾びれにも、人間の足の形にも似ているが、人間の足というなら、このうち、西側つまり甲からつま先にかけてが松前半島で、東側つまりかかと部分が亀田半島にあたる。函館は中間の土踏まずのあたりである。

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(写真2 恵山国道の途中にある汐首岬の看板。北海道~本州最短地点とある=2015年10月7日)

 恵山岬へは、函館から国道278号線(通称恵山国道)で向かう。ひたすら津軽海峡を右に見て進むが、道のりの半分ほどか、途中に汐首岬の看板がある。ここが津軽海峡が最も狭まったところで、対岸に大間崎が遠望できる。海上直線距離なら青函トンネルが通っている松前半島の白神岬と津軽半島の龍飛崎と結ぶ線よりも短いようだ。なお、灯台は丘の上にあり、自動車を運転中に目撃することはよほど注意していないと難しい。
 さらに進むと恵山の集落。国道は恵山岬には直接通じてはいなくて、集落を左折して恵山のすそ野をぐるっと回り込むようになっている。なお、この付近にはかつて大きな涅槃像があったが、現在はどうなっているか。
 椴法華(とどほっけ)小学校を右折して漁港に出るとそこはもう太平洋。さらにここを右折し急坂を登ると恵山岬はすぐ。この間、函館から約50キロ、1時間の道のり。

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(写真3 恵山岬遠望。小高い山が恵山標高618メートル=2011年2月11日)

 恵山岬は恵山の裾野が海に尽きるところにあり、突端に恵山岬灯台がある。海食崖によるものか、30メートルほどの断崖絶壁になっている。この周辺は公園として整備されており、とても見晴らしがいい。

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(写真4 灯台資料館ピカリン館=2015年10月7日)

 灯台は白堊の円筒形で、灯塔はやや太く、いかにも激しい風雨に立ち向かう力強さが感じられる。てっぺんには風見鶏が取り付けてある。日本の灯台50選の一つである。灯塔に登ることはできないが、眼前には遮るもののない大海原が広がっており、ここで津軽海峡と太平洋を分かっている。晴れていれば、下北半島の尻屋崎や、室蘭のチキウ岬までも遠望することができる。付近には灯台資料館「ピカリン館」がある。

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(写真5 波打ち際にある水無海浜温泉=1991年6月30日)

 灯台からほんの少し足を伸ばすと、水無海浜温泉がある。これは波打ち際に岩を組んで造った露天風呂で、無人だが、脱衣所が設置してある。満潮になると波に覆われて隠れてしまうという温泉で、波打ち際から段々に3つの湯船があり、干潮時なら3つの風呂ともに入浴できる。

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(写真6 足下から源泉が噴き出しており、もうもうと湯煙が上がっている=1991年6月30日)

 一番下がぬるく、逆に一番上は熱いくらいで、2番目の湯船から温めのお湯を一番上に汲み上げて適温にする必要がある。温泉は足下から湧いていて、源泉は50度ということである。野趣あふれる温泉にのんびりと浸かることができるし、ほぼ海面とほぼ同じ目線でお風呂に入るというまれな経験ができる。

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(写真7 岬にある椴法華公営のホテル恵風=2011年2月11日)

 一方、灯台のそばにはホテル恵風という、椴法華公営の温泉がある。恵山は活火山だし、このあたりは温泉も多い。このホテルの日帰り入浴が実にいい。ここの共同浴場には大小、露天などと5つもの風呂があって、それぞれに源泉も違う。

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(写真8 浴場。手前の風呂には高温44℃~46℃と掲示がある=2011年2月11日)

 内湯に入ると、大浴槽には「中温41℃~43℃」と表示がある。なかなかいい湯加減で入浴客は全員この浴槽に入っている。源泉は炭酸水素塩泉で、源泉温度は60.2度とある。
 小浴槽は「高温44~46℃」とあり、ちょっと熱いがとてもいい。45度か46度くらいか。熱い湯が好きなら、大変気持ちいい。まるで極楽の気分だ。ナトリウム塩化物泉で、源泉温度は58.4度とあり、源泉掛け流しである。
 いつだったか、休日でもあったし、地元の人たちが朝から入浴に来ていたおりのこと、この熱い方の風呂にのんびりと浸かっていたら、「あんたよくその熱い風呂に入っていられるね」と驚かれた。地元の人でも入る人は滅多にいないとのことだったが、自分にとってはまさに上々、これほど自分好みの温泉に入れるとは滅多にないこと大満足である。実際に入浴した感覚では45度くらいかと見当をつけていたが、係の人が計測していたので尋ねると45.1度と温度計を見ながら答えてくれた。私の体感計もたいしたものでなかなか正確である。

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(写真9 ホテルの食堂で供された見事なイカ刺し=2015年10月7日)

 湯上がりに食堂でイカ刺し定食をいただいたが、これもすばらしいものだった。真イカなそうだが、肉厚だが透明感もあり歯ごたえもしっかりしている。量も多くて、二はい分もあろうかと思われた。とにかく食べきれないほどだった。

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(写真10 恵山国道沿道に残る旧戸井線遺構)

 帰路も恵山国道を折り返すと、途中、戸井の集落付近では、右の丘の斜面にコンクリート製のアーチが目撃できる。それが数キロにもわたって点々としている。これは旧戸井線の遺構で、函館と戸井を結ぶ路線として建設を進めていたものだが、戦況の悪化に伴い工事は中断され、戦後も再開されることなく放置されているもので、見ると、とても立派なアーチで今日でも美しい姿を遺している。

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(写真11 水無海浜温泉付近から遠望した恵山岬。灯台が頭を出している=2011年2月11日)

 

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(写真12 灯台は白色塔形。高さ約19メートル=2011年2月11日)

<恵山岬灯台メモ>(「灯台表」等から引用)
 航路標識番号0039(国際番号M6729)
 名称/恵山岬灯台
 位置/北緯41度48分9秒 東経141度11分01秒
 所在地/北海道函館市恵山岬町
 塗色・構造/白色塔形 コンクリート造
 レンズ/第三等大型フレネル式
 塔高/18.85メートル
 灯火標高/44メートル
 灯質/等明暗白光 明3秒 暗3秒
 光度/34万カンデラ
 光達距離/17.5海里(約32キロ)
 明弧/156度~335度
 初点/1890年(明治23)11月1日、1989年3月改築
 管理事務所/第一管区海上保安本部