ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

『世界ことわざ比較辞典』

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世界初の編纂

 日本のことわざと世界のことわざを集めて比較した辞典。日本ことわざ文化学会編で、世界的にも前例のない辞典らしい。
 日常的に使われている日本のことわざ300を見出しとし、これに世界25の地域と言語から似たようなことわざを取り上げた。集めた世界のことわざは6500以上で、すべて日本語訳と原語が掲載されている。
 一つ引いてみよう。
 類は友を呼ぶ(=性格などが似た者は自然に寄り集まるようになるという譬え)。古典ギリシャ語の「似たもの同士友である」など世界18の地域・言語のことわざが紹介されていて、英語では「カラスはカラスの隣にとまる(Jackdaw always perches by jackdaw)」などという例が示されている。面白いのは台湾で遣われている「竜は竜と、鳳は鳳と、猫背の人はとんまと一緒になる」ということわざ。猫背の人はとんまと一緒になるという意味がわからない。
 世界で遣われていることわざにも面白いものがある。逆引きしてみると、ロシアに「司祭が好きな人、その奥さんが好きな人、その娘が好きな人もいる」とあるが、日本でどういうことわざに対応するものか見当もつきにくいが、日本では「蓼食う虫も好き好き」ということになるらしい。
 概してヨーロッパ諸国では通底する文化が同じようなものだろうから似たような表現になっているようだが、これに対して、日本のことわざが中国や韓国とどのような異動にあるかということもわかって興趣が深かった。
 とにかく読んで面白い辞典。特に逆引きで読んでいくと奇想天外な言葉遣いがあったりとびっくりするほど。25もの言語に当たったというから大変な労作だ。
(岩波書店刊)