ABABA’s ノート

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栗原小巻の「愛の讃歌―ピアフ」

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(写真1 開催案内のパンフレットから引用)

ピアフの半生を一人芝居

 舞台はとても簡素である。右にベッド、中央にティーテーブルと2脚の椅子。左にマイクスタンド。そしてその左に隠れるようにピアノとドラム。
 芝居は、ベッドに座って自らの人生を回想するシーンから始まった。死期の近いことを悟っていたのか、「私の人生は、まもなく終わるでしょう。その時がきたら、いろんな人が私のことを語りはじめるに違いない。でもみんなの話があまりに真実と違っていたら、私がどんな人間だったのか、本当のことは誰にもわからなくなってしまう。時間のあるうちに、自分のことを話しておきたい」と語り出したのだった。
 エディット・ピアフは、フランスのシャンソン歌手。戦後大ヒットした「バラ色の人生」や「愛の讃歌」などで現在に至るも世界的にも親しまれている。しかし、47歳で没したその人生は波瀾万丈だったことでも知られている。
 ハイライトはやはりマルセル・セルダンとの恋だっただろうか。ボクサーだった彼とは1947年ニューヨーで出会った。しかし、セルダンは2年後に飛行機事故で死亡しており、この年1949年に発表されたのが「愛の讃歌」だった。
 栗原の歌う「愛の讃歌」は、切々として胸に迫るものだった。劇中、全部で6曲か7曲も歌ったのだろうか、澄んだ声に品のある清潔のある歌唱でとても素晴らしくて、役者が必要に迫られて歌も歌ったなどというレベルのものではなかった。
 また、栗原の台詞回しはあくまでも理知的で、品もあって私は好きなのだが、舞台俳優としての鍛錬もあったのだろうが、台詞が明瞭で、私の席は後方だったのだが力強い手応えだった。ただ、この日の栗原は声がややかすれていて風邪気味のように感じられたがどうだったか。
  栗原の一人芝居を見るのは2度目。4年前になるだろうか、劇場はこのたびと同じく亀有のリリオホール。演し物は「松井須磨子」だった。
 思い起こせば、松井須磨子もエディット・ピアフも情熱的な女性。この二つの役柄はともに栗原にとってはまり役ではなかったかと思われたが、それは演じる栗原自身がとんでもなく情熱の女であることによるものかも知れないと思ったものだった。
 最後にもう一つ。ピアフの人生は〝真実の愛〟を希求していたように受け止められたが、メモが曖昧だからいい加減だが、最後の場面で「愛を知らないやつは、恋もすることがない」と語っていたのが気になった。
 原作エディット・ピアフ自伝。翻訳中井多津雄、構成・演出加来英治、ピアノ城所潔、ドラマー長谷川清司。製作エイコーン。

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大が続く3月5日の公演。開催できるのか危ぶんでいたが、主催者に問い合わせると予定通り開催するとのことだった。ただ、会場は空席が目立った。やはり感染を敬遠する人が多かったのであろう。