ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『第三夫人と髪飾り』

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(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用)

ベトナム映画

 ベトナム映画とはどういうものか関心があって観た。
 19世紀のベトナムが舞台。深い谷間の川を2艘の船が滑るようにやってくる。船には花飾りが施されている。乗っているのは少女。豪農の家に花嫁として嫁いできたのだ。
 家には、すでに第一夫人、第二夫人がいて、第一夫人には成人に近い男子が一人いて、第二夫人には子供が二人いるがすべて女子。主人にすればもう一人男子が欲しいわけで、古くから使えている召使いによれば、第二夫人には男子の子供がいないので〝奥様〟とは呼ばれないのだという。少女は必ず男子を産みたいと願う。
 家の生活は平穏。第一夫人も第二夫人も第三夫人をまるで娘のようにいたわってくれる。第一夫人はすでに跡取りを設けているから毅然としており、第二夫人は美麗が衰えない。
 映画の舞台になっているところはベトナム北部のチャンアンというところらしい。世界遺産にもなっているところで、なるほど、実に美しい風景が広がっている。映画は全編にわたって霞がかかったような様子で、これが映画を陰鬱にしており際だった映画言語となっている。
 しかし、一見平穏そうな映画にも、第三夫人が妊娠するや映画にきしみが出始め、葛藤が生まれる。
 19世紀と言えば、日本なら江戸時代か。ベトナムでは一夫多妻制があったわけだ。それに、三人の夫人が食事からすべての生活を一緒に営んでおり、夫人間の争いはないように見える。
 ベトナムは越南と呼ばれてきたように歴史上中国の影響が強く、この時代もそうだったのではなかったか。
 実際、映画で見る生活様式などは中国に似ているようだったし、言葉も中国語に似て聞こえた。
 なお、映画では蚕だとか鶏の血などと隠喩を思わせるものがたびたび映し出されたが、その意味するところははっきりとはわからなかった。また、日本語のタイトルについている髪飾りもその意味するところがよくわからなかった。(原題は単に第三夫人のみ)
 女性監督のアッシュ・メイフェアはベトナム生まれで、ニューヨークで映画を学んだらしく、本作が初めての長編ドラマだという。
 映画は、終始緊張感をもたせる運びなのだが、何を訴えたいのか、テーマのわかりにくい内容だった。そこがこの映画の持ち味だとすれば、私の見方は浅はかだったと言うほかはない。