ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

『刑事の矜持』

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ミステリーのアンソロジー

 日本推理作家協会賞受賞作家たちによる傑作短編集第7弾。
 大沢在昌、黒川博行、佐野洋、島田一男、土屋隆夫、角田喜久雄の6人が名を連ねている。ただ、佐野、島田、土屋、角田の4人はすでに物故者。初出時も、60年70年前のものもあって、古典というよりも、現代の警察小説を読み慣れているとやや古くささを感じないでもなかった。
 大沢の「亡霊」はばりばりの現役だし人気の新宿鮫シリーズの短篇とあってさすがに読ませる。短編集『鮫島の貌』ですでに読んでいたから新鮮さには欠けたが、意表を突く設定と舞台の新宿が活写されていて面白い。
 土屋の「絆」は、この作家の特徴である深い情感が得られてしみじみとしてくる。刑事物であり殺人事件だから本来殺伐としてくるはずの物語が、土屋の手にかかれば感情移入したくなる文章だし、ミステリとしての醍醐味にもうならされる。戦後日本のミステリ界において独自の世界を築き上げた土屋を知らしめてくれる作品だ。
 それにしても、黒川の「帰り道は遠かった」は、この作家の特徴らしいが、きつい大阪弁には最後までなじめなかった。
(双葉文庫)