(写真1 演奏会場の様子)
ロシア気鋭のピアニスト
8日築地の浜離宮朝日ホールで開催された。
ミロスラフ・クルティシェフは、ロシア気鋭のピアニスト。レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ34歳。第13回国際チャイコフスキーコンクール(4年に1度モスクワで開催される世界的コンクール)で優勝などの実績がある。
いやはや力強くもつややかさも兼ね備えた演奏だった。特に、もちろん演奏した曲目のせいでもあるのだが、男性らしく激しくも大胆なピアノで驚いた
演目は演奏順に、まず、シューマンの「クライスレリアーナOp.16」。8曲から構成されるピアノ曲集で、シューマンの代表的傑作らしいが、私のようなレベルの低い聴衆には難解だった。起伏のある曲で、同じモチーフが時折現ることぐらいはわかったが、全般に曲想がつかみにくいし、テクニック上も難曲らしいが楽しめなかった。そして、何よりも演奏時間が30分も超す長さで、率直にはやや飽きた。
続いてリストの「ハンガリー狂詩曲第19番ニ短調S.244/19」。ハンガリー狂詩曲については第2番などはさすがに私でも知っているが、第19番というのは知らなかった。19曲つくったハンガリー狂詩曲中最後の作品らしい。
それにしてもピアノという楽器は偉大だ。この会場は550席程度のホールで、私の席は2階席の後方だったが、ピアノの演奏が隅々まで届いていた。ホール自体の音響効果も抜群なようで、すばらしいコンサートとなっていた。
さて、休憩を挟んで次がショパンの「バラード」。第1番から第4番まで全4曲が演奏された。バラードということだから物語風ということだろうが、なるほど、各曲ごとにバラードらしいダイナミックな変化が見られた。
演奏者のクルティシェフは、4曲続けて演奏したのだが、1曲終わるごとに起ち上がってあいさつをしていて、初め気がつかなかったのだが、なるほど、これは第1番から第2番などとそれぞれが独立した曲だったのだ。
そのつもりで聴いていると、第1番は激しく、第2番はメリハリがあり、第3番では華やぎがあったし、第4番は美しくも物語の大きさが感じられた。
この日の演目は好事家ほど好むような内容で、拙い私には総じて難しい曲が多かったのだが、世界的にも活躍しているピアニストのリサイタルに立ち会えたという感激はあったのだった。