ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

展覧会『コートールド美術館展』

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(写真1 マネ「フォリー=ベルジェールのバー」=会場で販売されていた絵はがきから引用)

ロンドンから魅惑の印象派

 上野公園の東京都美術館で開催されている。
 コートールド美術館とは、ロンドンのウエストミンスターにあるギャラリー。サマセット・ハウス内にあり、規模は大きくはないが、質の高い印象派・後期印象派のコレクションで知られる。大規模な改修中とあって魅力的なコレクションがごっそり来日した。
 コートールドは、イギリスの実業家。美術館はそのコレクションが基になって開館した。よほど印象派が好きだったと見えて、それも自身が目利きとなって収集したようで、コレクションは選りすぐりの粒そろい。。
 美術館はロンドンの中心にあるし、自身印象派が好きだからロンドンを訪れるたびに何度も足を運んだ。ルーブルやメトロポリタンのような巨大な美術館と違ってゆったりとプロムナードするように見られるのがいい。このことでは、ナショナル・ギャラリーもそうで、しかも、コレクションが王室とは関係のない民間からの寄贈によるというのも感心させられる。
 モネ、セザンヌ、マネ、ゴッホ、ピサロ、シスレー、ルソー、ルノワール、ドガ、スーラ、モディリアーニ、ボナール、ロダン、ゴーガンなどとあって、いやはやこれはもう印象派・後期印象派の殿堂ではないか。

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(写真2 セザンヌ「パイプをくわえた男」=会場で販売されていた絵はがきから引用)

 特に好きだったのか、セザンヌの作品が多かった。「大きな松のあるサント=ヴィクトワール山」は、同じモチーフの作品が何枚もあるが、この絵には右隅に鉄道橋が描かれていて珍しい。「カード遊びをする人々」は労働者の情景がいいし、対面する左の男は「パイプをくわえた男」ではないか。なかなか味わいがある。カード遊びも同じような図柄の絵がメトロポリタンやオルセーなどにもあるから既視感につきまとわれる。
 展示の仕方で面白かったのは、美術館の展示室が大きな写真パネルで再現されていたこと。実際の展示室は、大きな屋敷の居間や応接間といった様子なのだが、展覧会でもその様子がうかがい知れるような工夫があった。
 ルノアールの「桟敷席」の前には大きな人だまりができていた。ただただ美しい。ルノアールはモデルを吟味して選んだらしいが、この絵の婦人の美しさは際立っている。
 マネの「フォリー=ベルジェールのバー」も人気。傑作であろう。接客するメイドのたたずまいもさることながら、大きな鏡に映し出された構図は複雑で読み解く面白さがあった。
 なお、一通り見た後、最後にもう一度会場を一巡し、これらの作品の中から好きな絵を1枚もらえるとして自分の書斎に飾っておきたくなるものはどれかという視点で選んだところ、「桟敷席」では家内が焼き餅を焼きそうだし、「フォリー=ベルジェールのバー」は大きすぎて(96×130センチ)猫の額ほどの我が部屋には不釣り合いだし、結局、「大きな松のあるサント=ヴィクトワール山」を選んだ。これなら緑やオレンジ色の配色もいいし、情緒が安定してゆったりと読書をするには良さそうだ。

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(写真3 ルノアール「桟敷席」=会場で販売されていた絵はがきから引用)