(写真1 松方コレクション展が開催されている国立西洋美術館正面)
世界遺産国立西洋美術館
松方コレクションとは、川崎造船所を率いた実業家松方幸次郎が、第一次世界大戦前後の1910年代から20年代を中心にヨーロッパで収集した美術品のコレクション。マネやモネ、ルノアール、ゴッホ、ロダンなどと西洋美術3千点が含まれている。
ただ、昭和恐慌で川崎造船所の経営が傾くや多くは手放さざるを得なくなったり、戦火に見舞われたりしてコレクションの大半は散逸していた。
戦後、これらのうちフランス政府に接収されていたコレクションについては返還されることとなったが、その際、フランス政府はコレクションを展示する美術館を建設するよう注文をつけていた。
こうした経緯で誕生した国立西洋美術館と松方コレクション。このたびの展覧会は美術館の開館60周年を記念しており、国立西洋美術館独自のコレクションのほかオルセー美術館や大原美術館など内外の美術館やコレクターから寄せられたコレクションが集まっていた。
(写真2 展示作品の一つジョン・エヴァリット・ミレイ「あひるの子」)
会場入口に展示されていたのがフランク・ブラングィンの「松方幸次郎の肖像」(1916)。ヨーロッパ滞在中のものか、なるほど、実業家松方の風貌がよく表れている。
展示は、コレクションに加えた順になっているのか、それはともかく展示のままに順に見ていったが、ジョヴァンニ・セガンティーニ「花野に眠る少女」、ピエール・ビュヴィスド・シャヴァンヌ「貧しき漁夫」、クロード・モネ「チャーリング・クロス橋、ロンドン」などがわたしにはよかった。ただ、これらはたびたび見ているものばかり、新鮮味には欠けた。
ほかに、オルセー美術館からはフィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」、ブリヂストン美術館からエドゥアール・マネ「自画像」、大原美術館からクロード・モネ「積みわら」が来ていた。
一方、国立西洋美術館は、ル・コルビュジエの建築作品ということで2016年世界遺産に登録されたが、松方コレクション展開催中のこの日建築ツアーが開催されていて参加した。
国立西洋美術館には何度も足を運んでいるのだが、改めて専門家のガイドを受けると、なるほど、コルビュジエの設計思想がわかるようで興味深かった。コルビュジエ自身が名づけたという19世紀ホールは、2階から中3階へと複雑な空間となっていて、明かりの採り方やスロープに工夫が見られたし、展示室の天井にしても細心の計算があって感心した。ただ、外観にしてもシンプルなもので、コルビュジエ作品と説明されなければさほど素人には注目されないものかも知れない。
(写真3 国立西洋美術館19世紀ホール)