ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

能取岬と能取岬灯台

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(写真1 草原が広がる能取岬と能取岬灯台)

台状の草原に立つ八角形の灯台

 能取岬は、網走の郊外、オホーツク海に鋭く突き出た岬。突端に能取岬灯台がある。
 岬には、網走駅からタクシーで約20分。駅前の坂道を直角に登ったから初め見当がつかなくて面食らったが、網走川を渡ってほどなく海岸に出て左折しそのまま北上した。頭に描いていた地図とは違ったが、タクシーが間違えるはずもなく最短を選んで美岬ラインと呼ばれる能取半島をたどる鬱蒼とした道道を途中で右折すると視界が開けて能取岬に出た。
 明るい岬だ。気持ちがいい。8月5日。真夏の青い空の下に草いきれがする。美しい草原が広々と開けている。周辺一帯は網走市営美岬牧場というらしい。
 草原の先の少し小高くなったところに黒と白の縞模様。能取岬灯台である。近づいて見ると八角形のがっしりとした灯塔。鉛筆に似ていなくもない。面白い形だ。黒模様は雪国にままある塗色。真っ白では灯台の存在が雪景色の中に薄まってしまう。
 なお、現地にあった灯台の概要を解説する看板によると、この構造は日本で最初の洋式灯台である観音埼灯台などの建設に関わったフランス人技師エオンス・ヴェルニーの様式を継承したものだとのこと。なるほど、観音埼灯台も八角形だった。もっともあちらは白く背が高くスマートだが。
 灯台に近づくまでは気がつかなかったが、灯台は崖っぷちに立っている。30メートルほどか、結構な高さがある。おそらく海岸段丘ではないか。実は、オホーツク海沿岸で海岸段丘は珍しい。そもそもオホーツク海沿岸に灯台自体が少なくて、能取岬灯台から最北端宗谷岬灯台までの約250キロの間に防波堤灯台は別としていわゆる沿岸灯台は紋別灯台、北見神威岬灯台の二つしかない。
 後背地に目をやると、なだらかな丘陵になっている。ここで鋭く落ちたものであろう。とても見晴らしがよく、眼前はどこまでも遮るもののないオホーツク海である。航行する船舶が見当たらないというのもオホーツクらしいか。夕方だったからかもしれない。波は意外にも静かだ。

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(写真2 灯台が立つ岬の先端はマッコウクジラの頭のよう)

 脇に回って眺めると、灯台があるあたりはマッコウクジラの頭のような形をしている。鋭く突き出た岬の先端である。岬の形状といい、灯台の特徴ある姿といい、とても印象深く美しい灯台だ。台状の草原やマッコウクジラのような先端ということでは、岬全体の印象が日本最西端の岬与那国島の西崎に似ている。
 私はこの岬は二度目だが、流氷が押し寄せる季節ならばまたまったく別の素晴らしさがあるのだろうと思われた。なお、この灯台は、流氷の季節には点灯しないようだ。沿岸を航海する船舶がなくて必要がないということなのだろう。

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(写真3 黒白黒白の縞模様と八角形が面白い灯塔。高さは21メートル)

<能取岬灯台メモ>(灯台表及び海上保安庁・燈光会が設置した看板等から引用)
 航路標識番号(国際番号)/0407(M6882)
 位置/北緯44度06分44秒 東経144度14分35秒
 所在地/北海道網走市美岬
 塗色/白地に黒横帯2本
 構造/塔形(八角形)コンクリート造
 灯質/単閃白光 毎8秒に1閃光
 実効光度/11万カンデラ
 光達距離/19.5海里(約36キロ)
 明弧/97度~335度
 塔高/21メートル
 灯火標高/57メートル
 初点灯/1917年(大正6年)10月1日
 管轄/第一管区海上保安本部紋別海上保安部
 なお、ウィキペディア等によれば、光源はLB-M30型灯器だとのこと。