ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

図書館と書店が融合した多賀城市立図書館

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(写真1 2階から見た蔦屋書店店舗(左部分)と、びっしりと本で埋め尽くされた壁面の書棚から右が図書館)

TSUTAYA図書館

 図書館と書店が融合した施設が評判になっているというのでわざわざ見学に出掛けてみた。
 仙台駅から仙石線で約20分多賀城駅下車。北口に出ると左目の前が宮城県多賀城市立図書館で3階建ての建物。

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(写真2 1階店舗。左の書棚の向こうが図書館。右にスターバックスコーヒーも)

 正面玄関から入るとまずは蔦屋書店の店舗。3階が吹き抜けになっていてとても明るい。右はスターバックスコーヒーのカフェ。左に書棚の壁を抜けると図書館。
 図書館に入って正面がカウンター。どうやらこの図書館部分は細長い造りのようで、右奥へと図書室が伸びている。
 壁面は書架になっていて、天上まで届くほどだから10段ほどか。ほかに胸の高さほどの書架が床に置いてあり、テーブルと倚子にソファがあちこちに配置されてある。全体の見通しがよく、大方の図書館のように、書架がびっしりと並んでいるわけではないから息苦しさはなく、倚子の数も多いからゆったりと過ごすことができそうだ。
 2階3階と図書室が展開していて、全部合わせると結構なスペースだ。蔵書数は20万冊を超すらしい。それも大半は開架となっているのが特徴だ。専門図書館ではないからこれは使い勝手がいいに違いない。ただ、この図書館は、書庫に収蔵してある閉架の蔵書数は約1割に満たないようだから、蔵書数には限りが出てくる。
 書架の分類は、ライフスタイル分類というのだそうで、料理とか旅とかそういう棚が目立った。これは、普段図書館をあまり利用しないような、本を探すことが苦手な利用者にとってはいいかもしれない。ただし、本を一直線に探したり、レファレンスを使い慣れている人にとっては少々まどろっこしく感じるだろう。
 きちんと精査したわけではないが、蔵書には理工系や社会科学分野が少ないように思われた。一カ所にまとまっているわけではないから数えにくいが、岩波文庫は全体でも100冊に満たないのではないかと思われた。これはいかにも少ない。
 比較的多いような文芸でも、近年刊行されている大江健三郎全小説が見当たらなかった。ノーベル賞作家にしてこの扱いにはいささか驚いた。
 多かったのはベストセラー作家の小説で、意地悪く見れば、まるで貸本屋のごとき棚揃えだった。もっとも、これは近年の公立図書館の傾向で、なまじ貸し出し数を競うからこういうことになる。
 また、棚は壁面一杯に天上まで届くほどで、これは壮観。装飾的な意味が強いように受け止められたが、実際、10段もあると上段には手が届かないわけで、周囲に脚立があるわけでもなかったから、どうするのかと職員に尋ねたら、呼んでくれればとってくれるとのこと。しかし、これはいかにもわずらわしい。
 もっとも、子細に見たら、上段部分にはダミーが置いてあるだけで、実際の本を陳列してあるわけはなかったから、あまり不都合はないのであろう。図書館の棚に、空の箱を並べてダミーにしている図書館というのも初めての体験で苦笑いした。蔵書が増えた際の予備ということなのだろうが、見てくれだけを気にしたようでいかがなものか。
 この図書館は、3年前の開館だが、管理運営は指定管理者であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)。TSUTAYAや蔦屋書店を傘下に持つ民間企業である。 図書館の運営に乗り出して3館目になるようで、これらは俗に「TSUTAYA図書館」と呼ばれているらしい。だからだろう、本屋としての蔦屋書店の棚配置に似ている。ここも、本を買いに行くというよりは、店内をぶらぶらするのに向いていて、我が家の近所にある蔦屋書店も、店員によれば、客の多くは幼児連れの若い母親だということである。
 実際、公立の図書館とは思われない工夫が随所に施されていて、まるで館内をプロムナードしたくなるような気分にしてくれる。また、駅前だし、書店も一緒だし、カフェやコンビニまで併設してあるから来館者は多いようだった。開館時間が365日9時から21時30分というのもすばらしい。
 ただ、この運営には異論があるに違いない。まず、蔵書数の20万というが多いのか少ないのか。私が週に一度は散歩がてら足を運ぶ近所の図書館は、市立の分館で小さなものだが、それでも蔵書数は開架に16万、地下の書庫も含めると28万部になる。書架がびっしり並んでいてすれ違うにも困難なほど。
 また、図書館が充実していることで知られる千葉県浦安市立図書館は、蔵書数約105万部。貸し出し数は年間200万冊。首都圏にあって人口も違うから一概には比較にならないが、試みに、工業、地理、文学各分野であらかじめ用意していった1冊ずつ探してみたがいずれも見つからなかった。念のため、職員にも手伝ってもらったが、ヒットしなかった。
 「図書館は本の置き場所ではない」というのは映画『ニュヨーク公共図書館』に出てきた言葉だが、同時に、「人気本は街に行けばすぐに手に入る。10年後に必要な本がここになくてどうする」とも言っていて、図書館運営はいずこも悩み深い。

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(写真3 多賀城市立図書館の「読書通帳」)

 ところでこの図書館で面白かったのは「読書通帳」という仕組み。どこの図書館にもある利用者カードとは別に設定してあって、預金通帳そっくりの冊子が、貸し出し履歴の通帳になっているのだ。貸し出し履歴の問い合わせが少なくないのだそうで、通帳にすることによって読書管理にもなるのではないかと言うことだった。使用することはないのだろうが参考までに500円で私も1冊購入した。

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(写真4 多賀城駅前の多賀城市立図書館外観)