ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

いよいよ函館へゴール

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(写真1 森駅から見た駒ヶ岳と左に噴火湾)

最長片道切符の旅北海道版第5日最終日

 森では駅前のホテルに泊まったらちょうど夏祭りの最中だった。旭川では神輿が出ていたし、稚内では花火大会だったし、このたびの旅では時節柄各地で夏祭りに遭遇した。
 最長片道切符の旅北海道版第5日。最終日。森から函館までは62.3キロ、1本の列車で一気にゴールだ。
 森は、噴火湾(内浦湾)に面し、駅からは夜来の雨もあがって駒ヶ岳がきれいに見えている。全国の駅にはホームから望める秀逸な景色がいくつもあるが、この森駅から眺望する駒ヶ岳は第一級のものであろう。列車の本数も少ないし、利用者も少ないから静かな旅情を感じさせる。森駅には2面3線のホームのほかに、1番線と2番線の間に側線が1本入っており、列車を待つ間にも長い編成の貨物列車が抜けていった。北海道では貨物列車にたびたび行き交うし、北海道は貨物列車がよく似合う。
 8月9日。8時00分発函館行き。3番線。長万部から来た普通列車。1両のディーゼルカー。私は車両のことにはあまり詳しくはないがキハ150形か。北海道は電化されていない路線が多いから、キハとはよく出会う。ワンマン運転。森といえばイカめし。駅前にその店があるのだが、残念ながら8時開店とかでまだあいていなかった。
 列車はいわゆる砂原(さわら)回り。森から函館に向かうについては、森-大沼間には、駒ヶ岳を円の中心にして駒ヶ岳経由の本線と、砂原回りの別線と二つのルートがあり、砂原回りは35.3キロと本線経由の22.5キロに比べやや長い。最長切符としては当然砂原回りを取る。ただ、この砂原回りは本数が少なくて、日にわずか6本しかない。なお、運賃計算は、JRの旅客営業規則第69条第1号の規定に従って本線経由で計算することとなっている。営業キロと運賃計算キロが異なる区間なのである。
 ともあれ森を発車した列車は、右窓に駒ヶ岳を仰ぎ見ながら東麓を時計回りに噴火湾沿いを走る。駒ヶ岳は二つのピークを持っていて、列車の進行によって刻々と変化する。また、左右とも車窓は樹木に遮られて見晴らしは必ずしもよくない。防雪暴風から鉄道を守るためのものだからいかんとも仕方がない。

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(写真2 渡島砂原駅。残念ながら砂﨑灯台は見えなかった)

 渡島砂原。このあたりから砂崎灯台が見えるはずで目を凝らしていたが、見落としてしまったようだ。波打ち際の砂浜に立つ珍しくも小さな灯台で、一度訪ねたことがあるが、大きな波がくれば被りそうだし、そもそも背の低い灯台だからどれほどの役に立つものか。ただし、噴火湾に入ってくる船舶にとっては重要な役目なのであろう。湾の入口を結ぶ対角線上は室蘭のチキウ岬である。
 大沼が右に見えだしたがこれも樹林に阻まれてすっきりとは見えない。きれいに見えたのは勘違いしがちだが小沼。ともあれ大沼駅で本線と合流。この駅で下車した西洋人の男女がいたが、見ていると、隣のホームに停車中の本線の下り列車に乗り換えていた。バックパッカーだったが、大沼公園に行きたいのであろう。それにしても時刻表をよく知っている。
 さて、大沼からは仁山、新函館北斗と続き七飯に。上り列車に乗っている限りでは何の問題もないのだが、下り列車の中には大沼-七飯間で異なるルートを走る列車がある。通称藤城線と呼ばれる区間で、仁山と新函館北斗の両駅は通らない。新幹線駅である新函館北斗をパスしてしてしまう列車があるというのもにわかには信じがたいが、日に3本ある。こういうところは、全線乗りつぶしの者にとっては厄介だ。しかも、この区間には独自の営業キロさえないという変わりよう。

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(写真3 七飯付近で左窓に見えた別線の高架。下り線専用である)

 ともあれ、仁山を経て新函館北斗に至って右前方遠くに函館山が見えだした。函館が近い。七飯付近で左に鉄道の高架線が見えた。知らなければ何のための高架か見当もつかないであろうが、これが藤城線である。

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(写真4 五稜郭を出ると函館駅へとがたがたとポイントを渡りながら長いアプローチを進んでいく)

 五稜郭で旧江差線である道南いさりび鉄道が分岐していき、長いアプローチを経て函館駅へと入っていく。青森駅や長崎駅もそうだがポイントをがたがたと渡りながら多数の側線に広がっていく終着駅特有の旅情が感じられて私は好きだ。函館駅はもとより行き止まりの終着駅である。

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(写真5 到着した函館駅6番線ホームでシャッターを押してもらった)

 そうこうして9時48分6番線到着。この瞬間が5日間にわたった最長片道切符の旅北海道版の終着である。ホームで若い男性にシャッターを押してもらい記念に写真を撮った。私はこれまでに、JR全線完乗や全鉄道全線踏破などの節目を経験してきているが、このたびの旅は、鉄道旅としてはそれほどの規模のものでもないが、感慨深さということでは最も激しいものを感じたのだった。
 結局、このたびの最長片道切符の旅北海道版は、稚内を振り出しに8月5日から9日まで5日間にわたり、9線区、1,492.1キロの乗車に及んだ。

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(写真6 最長片道切符北海道版の切符。途中下車印で一杯になった)

 この間、乗り継いだり、乗り換えたりして途中下車した回数は18回に及んだ。そのつど、切符に途中下車印を押してもらったから最後には券面があちこちの印で一杯になった。ただ、この間には無人駅も少なくなかったし、押してくれなかった駅もあったから全部の駅が揃ったわけではないが、何かにぎやかで誇らしげだった。
 稚内への前乗りのためも含めると6泊7日の旅となったし、その全てが移動で毎日ホテルが変わったからなかなかきつい旅だった。ただ、この頃のホテルはコインランドリーを常備しているところが多く、夏でもあったし着替えが多くなくて済んだのは幸いだった。

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(写真7 最長片道切符北海道版の路線図)