ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

ひたすら函館本線で小樽から長万部、森へ

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(写真1 小樽駅4番線で発車を待つ倶知安行き列車)

最長片道切符の旅北海道版第4日

 小樽には寿司屋通りがあるというほどに寿司屋が多い。何でも100軒ほどもあるらしい。全般に北海道にはうまい寿司屋が多いが、私の好みで言えば小樽のほか釧路、函館といったところにいい寿司屋がある。当然だが全て港町。滅多に行けるところではないが、二度行って二度とも大当たりだったのは羅臼。私が好むのは、もちろん寿司がうまいことのほか、酒も良く、親爺との会話が楽しめることも。その上、値段。
 小樽にはこれまでに6回泊まったことがあって、そのつどうろうろと探し回ってきた。知っている店もなくはないが、このたびは泊まったホテルのフロントにいた女将らしい女性に「安くてうまい、観光客なかんずく中国人の寄りつかないような店」という難問を突きつけたら二つ三つ候補を挙げてくれたのだが、そのうちの一つ目に入ってみたらこれが大当たり。
 店は、カウンターが8席ほどに小上がりがあって小ぢんまりとしている。夫婦で営んでいる。こういう店はいい。初めに酒と肴をつくってもらってゆっくりとやっていた。親爺はおしゃべりではないが相づちは悪くない。全国各地の観光地で手に入れたものであろう通行手形が壁一面にぶら下げてある。旅行が趣味らしい。カウンターには先客が一人だけいて、50歳くらいの男性。常連らしいがとても話し上手。ほかに客もいないし話が弾んだ。
 この先客が握りは特上を頼んだ方がいいと薦めるのでその通りにしたらこれがすごい。ウニ、イクラにアワビ、トロ、ツブ貝、ホッキ貝、ホタテ、ヒラメなどとあっていかにも豪華。値段が心配になるがこれで驚くことにたったの2千円。私がホテルの女将に頼んだ注文通りの店だった。
 さて、最長片道切符の旅北海道版第4日。小雨。この頃では乗る人が少なくなった函館本線でひたすら長万部から森を目指す。この日は寄るところがあって小樽出発は遅くなり15時05分の普通倶知安行き。
 函館本線とは、函館から長万部、小樽、札幌を経て旭川とを結ぶ全線458.4キロ(別線含む)の路線。北海道最長で最古の主要幹線。ただし、現在では、長万部から室蘭本線と千歳線を介したルートが道南と札幌と結ぶ主要幹線となっており、長万部-小樽間については通称〝山線〟と呼ばれローカル線化している。
 1両のディーゼルカー。ワンマン運転。これが満席。本数が少ないからでもあるのだろう。倶知安(くっちゃん)まではそれでも日に12本あるのだが、長万部までは倶知安乗り継ぎを含めても4本しかない。
 小樽を出て蘭島を過ぎたら海岸から離れ余市に。ここでたくさんの乗客が降りた。ニッカウヰスキーの工場があるからで、観光スポットになっているのである。私もかつて見学したことがあるが、60度ほどの強い原酒を飲んだ記憶がある。

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(写真2 かつてここで運転中止になったこともある然別)

 車内が静かになって然別(しかりべつ)。私はこの駅に思い出があって、何年前になるか、函館本線を長万部から下ってきた際、豪雨になってこの然別で運転中止となったことがあったのだった。北海道を鉄道旅行していると、暴風雪に立ち往生したり、様々な場面に遭遇して北海道の自然の厳しさを知ることになったものだった。

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(写真3 倶知安駅。「G20観光大臣会合」の幕が張られている)

 少しして倶知安。16時30分着。16時55分発長万部行きに乗り継ぎ。北海道らしいいい名前。印象深くて、小学生の頃、北海道の地名で最初に覚えた名前ではなかったか。沿線で大きな町で、ジャガイモの産地であり観光の町として知られる。駅舎には、「G20観光大臣会合」の大きな幕が掲げられていた。今年10月25-26日に開催されるようだ。函館本線〝山線〟の中心でもある。
 雨が強くなってきて窓外がほとんど見えない。これから比羅夫、ニセコと進むのだが、今回も駄目だったかとがっかりする。つまり、この付近で左窓に羊蹄山(1,898メートル)、右窓にはニセコアンヌプリ(1,308メートル)が望めるはずなのだが、この絶景を目の当たりに出来たのは、ここを通った4回中1度しかない。いかにこの山中の自然が厳しいものか。
 山を下って長万部に着いたら雨は小降りになっていた。18時30分着。当初の計画ではこの長万部に泊まりたかったのだが、旅館・ホテルはどこも満室だった。7軒くらいしかない町ではあるが、それにしてもどうしたことかと問いただすと、学生が200人も合宿するのだということだった。
 ところで、現在建設中の北海道新幹線は、新函館北斗から延伸し、長万部、倶知安、小樽とほぼ函館本線に沿って札幌に至る計画。そうすると、倶知安、小樽あたりは観光地としてさらに開けるのではないかと期待される。特に倶知安周辺は、温泉も多く、夏は清涼だし、冬もスキーなどのスポーツもあってリゾート地として一層人気が高まるのではないか。ただし、新幹線が開業すると、〝山線〟は並行在来線の措置により、JRから切り離されて第三セクターに転換されてしまうこととなっており、鉄道ファンとしては寂しくなってしまう。なお、北海道新幹線の札幌延伸開業は2031年春の計画。
 長万部で宿を確保できなかったのでさらに函館本線を森へと向かう。私の旅の流儀では、夜は極力列車に乗らないこととしている。夜のしじまを走る列車にも独特の風情があっていいものだが、車窓の楽しみは減る。
 しかし、今回はやむをえず長万部19時03分発特急スーパー北斗20号。〝山線〟から乗り継いだ乗客が4人いた。このうち一人は小樽から一緒だった。ちなみに調べてみたら、小樽を3時00分に出て札幌そして室蘭本線経由で来ると、長万部到着は18時01分となり、〝山線〟を鈍行で来るのよりも30分ほど先着する。営業キロ数は〝山線〟の方が30キロほど短いがそういうこと。
 左窓に見えるはずの噴火湾も真っ暗で、森19時44分着。
 結局、最長片道切符の旅北海道版第4日は、函館本線だけを乗り通し、203.0キロ、約4時間40分の乗車だった。晴れ男を自認している私だが今回も〝山線〟には勝てなかった。

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(写真4 暗くなり始めた長万部駅)